第814話 全力前進最高速度


 アイスには帰ってぐっすりと休んでもらった。アレだけの魔法を行使したのだ、いかにアイスと言えども流石に疲労困憊だろう。


 しかし、まあ、よくもこれだけのことをやってくれたよなー。このイベントは全プレイヤーに中継されてるんだぞ? まあ、アイスには関係のないことかもしれないが、俺の胃は困るって話だ。


 まあ、最悪クランを抜けないといけなくなっても、全プレイヤーが敵になっても俺はアイスの味方だからな。


 ……このイベント終わったらレベル上げとステータス上げしなきゃな。


 っと、余談はこのくらいにしておいて今は目の前のクリスタルだな。さっきからこのクランのプレイヤーが見えないのだが、どこにいったんだろうか。まさか、従魔に戦わせるだけ戦わせといて主は陰でコソコソしているだけか?


 それに関しては俺を見習って欲しいな。テイマーと言えどご主人様も戦うべきだ。ま、俺はテイマーじゃないんだけど。


 にしてもプレイヤーが一人もいないのは妙だな。隅々まで探しても一人も出てこないのは奇妙だ。クリスタルも見つかっていない。これは……どう言うことなんだ?


「はっ、もしかして……!」


 俺はあることに気がつくと急いでウィンドウを開いた。するとそこには48/50という数字があった。まずい、もしかして砦をガラ空きにして俺のクランを狙いにきたってことか??


 また数字が一つ減った。不味いな、これは一刻を争う状態だ。


「お前ら、ここでクリスタルを探せ。クリスタルは砦内にしか設置できないはずだ。だから急いで見つけて壊すのだ。俺は、防衛戦に向かう」


 手短にメンバーに要件だけ伝えると俺は砦から飛び出した。くそ、まさか砦を捨てるなんてそんな大胆な行動に出るとはな。だが、この戦法を使うってことはクリスタルが壊される前に俺らを全滅、もしくはこちらのクリスタルを破壊できると踏んだってことだよな?


 まあ、確かに攻めと守りに別れている今は絶好の叩き時か。頼む、俺が帰るまで持ち堪えてくれ!


「【韋駄天走】!」


 俺はスキルを発動し、その上で全力で足を回転させた。人間の足の速さを決めるのは歩幅と回転数だ。スキルを使うと空中にいる状態の時に追い風が吹くような感じで移動距離が伸び、結果的に歩幅が大きくなる。


 そこで俺は回転数を意識して尚且つ脚も最大限に伸ばして歩幅の更に大きくしようとする。文字通り一歩間違えば転倒してしまいそうなくらい変な走り方なんだが、全力集中でなんとか次の一歩につなげる。


 両手も全力で振って少しでも距離を稼ぐ。そんな目先の一歩しか考えていない走行がどれだけ続いただろうか。気付いたら自分の砦が見え始めた。


 よし、お前ら、よく持ち堪えたな。あとは任せ


 ボゴッ


 俺は壁に激突した。


 そりゃそうか、あんだけ無茶な走り方して自分史上最速を出したのだ。そりゃ減速の仕方なんて分かるわけない。


 ど、どうしよ。壁に埋まるのも初めてだから抜け方も分からない。



ーーースキル【光速】を獲得しました。



 え、いや、今それどころじゃないんですけど。

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