第813話 氷像に表彰


「「「「「グギギャアアガァゴガァ」」」」」


 さてどう攻略したもんかな、と思った矢先、俺の後ろからいや、俺の後頭部から声が聞こえてきた。


『ねーねーごちゅじんちゃまー、あいすもたたかいたーいー』


 あ、完全に忘れてたぞ、アイス。不味い、どうやって言い訳をしようか。今すぐ戦わせてあげたいんだけど、アイスの敵にいきなりこんな化け物を戦わせるのは流石に気が引けるからな。ってか、念話って後頭部から聞こえるんだな、初めて知った。


 ってか、本当にどうしよう。アイスから嫌われたくはないが、危険にも晒したくない。不味い、不味いぞこれは。


『ねーねーこのおっきなやつあいすがたおちたいー。いいー?』


 あ、これは不味いな。この答えは二つにして一つ。そうだ、アイスは無血と相性が良いはずだ、なんせ血すらも凍らせることができるんだからな、ここは一旦アイスに任せて、アイスに攻撃が飛んできてら俺が庇うかそいつをぶっ飛ばせば良いだろう。


 よし、覚悟を決めよう。可愛い子には戦わせろ、だ。


『わ、分かったぞアイス。頑張ってみろ、ただ、危なくなったら俺が変わるからな!』


『わかったー』


 本当に分かっているのか、このクソ可愛いワンチャンは。まあ、俺にできることは攻撃を全部防ぐことと信じることだけだ。アイス、ファイト!


『んーからだがおーきいからまじゅはあたまからねらおー』


 そんな可愛らしい声が聞こえたと思った次の瞬間、


『あいすこふぃんー』


 猿の顔面が一瞬にして凍りついてしまった。アイスの凄いところはこの魔法の展開の速さもそうだが単純に規模が大きいのだ。顔だけでもアイスの倍以上あるのにそんな大物相手でもこうして一瞬で対処する様は圧巻だ。


 しかし、敵も一筋縄でいける相手ではなかった。なんと、ライオンの顔が口から火を吹き、猿の氷をとかしてしまったのだ。


 いや、普通に考えて一回凍らせたものを溶かすだけで大丈夫なのか、と言う問題はあるが、猿は戸惑っているかのように目をパチクリさせて戦線に復帰してしまった。


『あー! あいすがせっかくこおらせたのにぃー!』


 これは流石に寛大なアイスでもご立腹のようだ。だが、現実問題ちと厳しくはないですかねアイスさん。ライオンの炎がある限りアイスの氷は溶かされるわけだし、ライオンをどうにかしようにも炎で打ち消されちゃいますよね?


 こ、これはもしかしてアイス大ピンチ!?


『もーおこったー! あいすおこったー! わるいこはみんなめーっ』


 あ、あれ、思ったよりも怒ってるのアイスさん? なら私が代わりに裁きを下しましょうか?


『いちやまんかい、はくぎんせかい』


 アイスがそう唱えた、いや、呟いた瞬間、巨大な体躯の敵が頭から尻尾まで一瞬にして凍りついてしまった。敵の体がそのまま氷像となってしまい、確かにどこか美しさすら感じてしまうほどだ。


 って、アイスさん!!??


 ここで新技ですか!? そんな技見たことないんですけど! 一夜満開白銀世界!?


 八文字熟語のスキルってことですかアイスさん!! ……まだ俺すら持ってないんだけど。一体アイスはどこに行っちゃうんだ、俺の可愛いアイスが。


 そんなことを考えられているとは露知らず、流石に疲れてしまったのか。アイスはパたりと横になってぐっすり眠ってしまった。はぁ、赤ちゃんは気楽で良いですな。

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