第803話 進撃する悪魔
俺は、安心幸福委員会幹部、ダンゾーだ。
今回は初めてのクラン毎によるイベント、クラン抗争についての記録を残していく。
我ら安心幸福委員会は有名なプレイヤーがいるとか、強力なランカーがいるというわけではないものの、陰でコソコソと地道に地力を蓄えてきた。
時には非道なこともしたり、ルールやマナーに抵触したりすることすら行なってきた。だが、それは全て今日の為に行なってきたのだ。世間は、このゲームのプレイヤーは誰も俺らのクランのことなんて知らないのだろう。
だが、それも今日で終わりだ。今日をもってこの安心幸福委員会がとうとう世間に知れ渡る日となるのだ!
「ふむ、対戦相手はあの有名な剣聖会とフンコロガシというクランか。初めて聞くな、巫山戯た名前だ。だが、我らが負ける道理などない、確実に準備をし、作戦通りにいくぞ!」
「「「はっ!」」」
リーダーからそのようなお言葉が掛けられた。そうだ、俺たちはこの日の為にずっと準備してきたし、負ける筈がないのだ。
まず、作戦の第一段階はこの砦の防衛力の強化だ。防御力をあげればクリスタルも壊されないし、委員会のメンバーも死なない。つまりは負けないということだ。負けなければ必ず勝てる、これはそういうゲームだ。
この作戦はイベントの開始と同時に始められた。魔法を使えるものを中心に壁を作ったり、砦の構造を複雑にしたり、攻められづらく建築していった。
魔法を持たぬものは肉体労働でひたすら堀を掘っていた。負けなければ勝てるのだからわざわざ外に出る必要もないからな。ガッチガチに守りを固める。
本当は堀の中にマグマなり水なりを流したかったんだが、流石にそこまでは手が足りなさそうだ。
そして、第二の作戦は徹底した漁夫の利戦法だ。私たち以外で戦闘が開始されたら積極的に漁夫の利を狙っていく。クリスタルさえ壊して仕舞えばそのクランはおしまいなのだから、戦闘に気が取られている隙にクリスタルだけを掻っ攫う。
「おっと、剣聖会とフンコロガシが戦いを始めそうですね。では、私が行ってきます。クリスタルは破壊するのであとは任せましたよ?」
同じ幹部である、隠密系が得意なロチャードがそう言った。コイツの言動は一々気に障る事が多いが、実力は確かだ。こいつの隠密は誰も見抜けないし、仮に見抜けたとしても倒せない、そんな輩だ。
味方にいる分はいいが、敵に回すと厄介な奴だ。
「おう、任せたぜ。途中で転んで死ぬなよ?」
「ふっ、貴方ではないのですからそのようなヘマはしませんよ、では」
そう言ってロチャードは闇に消えた。へっ、相変わらずキザなヤツだぜ。そんな間にも俺らは作業を進めていく。
「ふぅ、こんなもんかー」
俺は額の汗を拭い、砦を見上げた。最初の砦からは想像もつかないような、大要塞が完成していた。うん、これは満足のいく出来になったな。
あとは所定の位置について、遠距離系は壁の上に、近接系は壁の内側に陣取って敵を待ち構える。
「なっ!?」
ウィンドウを見ると49/50の数字、この砦からでたメンバーはロチャードしかいねー。つまりはアイツが死んだってことだ。剣聖会も全滅している。まさか、変な名前だと馬鹿にしていたフンコロガシがここまでやったというのか?
俺のこめかみに一筋の汗が垂れた。来る!
「て、敵襲です、敵襲です!!」
全員が戦闘態勢に入り、俺も近接系として臨戦態勢に入った。そして、壁の内側からみてしまったのだ。
「きょ、巨人……」
悪魔の笑みを携えた巨人の姿を。
ッドッゴーーーン!
その一撃で俺たちの数時間の努力が消し飛んだ。そして俺は瞬間的に理解させられてしまった。
こいつにロチャードはやられたのか、と。
「うぁああああああああああ!!!」
ブチャ
その日俺たちは思い出した、俺たちは弱者であるということを。
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注)このゲームでは汗は流れません。(多分
あ、タイトルべ、別に何も意識してませんからね??
これを読んで何かを想起してしまった方は……
心臓を捧げよっ!(ビシッ!
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