第802話 ゴリラ饅頭
俺らは安心幸福委員会の元へ進軍を始めた。
もちろん、全軍で、というわけではない。砦には強弱両方のグループから有志の者たちを五名ずつ募り配置している。更には俺の分体もおまけで五人くらい配置した。
つまり、心配することは何もない、ってことだ。漁夫ろうとした幸福委員会を不幸になるまで叩きのめす。それだけを考えていればいいのだ。
まあ、もし砦が襲われたらこっちに連絡が入るし、逆に俺らが攻め入る砦の防御が薄くなるってことでもあるからな。さあ、どうくる?
そんな事を考えながら行軍していると、前方に砦の影が見え始めた。
「って、え、何あれ!!??」
更に進んで近づいて見ると、そこには俺の知っている砦はなく、完全に要塞と化した建物があった。柵というかほぼ壁みたいなものが周りを囲んでおり、その外側には堀すらもある。建物はウチの建物よりも縦長になっており、ねずみ返しのようなものまでついている。
いや、流石にそこまで登ろうとは思わないぞ?
確かルール説明の時には同じ砦が配られるって話だったよな? ってことはチートか運営の贔屓じゃなきゃ、幸福委員会がこの間に砦の強化を行なっていた、ということになる。
ん、あ、もしかしてこのクラン抗争ってそういうゲーム?
俺がこのゲームについて理解しかけた時、メンバーの一人が叫んだ。
「攻撃が来ます!」
その言葉で一気に現実に引き戻されて敵の砦を確認した。すると、大きな魔法陣が展開されており、明らかにこちらを狙っている。あ、これやばいかも。
完全にこちらを狙っている見えない敵に対してこちら側は何もない草原の上に固まって突っ立っているだけだ。格好の的もいいところだ。だが、逃げようとしたところでまた捕捉されて攻撃されるだけだ。なら、俺がしなきゃいけないことは……
「【筋骨隆々】、お前ら砦に突っ込めー!!!」
俺は魔力を自身に込めて体を一気に膨張させた。
ダダダダダダンッ!!
氷の礫、それも拳大のものが飛んできた。俺はそれを巨大化した体で一身に受けた。その後も炎、水、雷などさまざまな魔法が飛んでくるが俺が全て受け切り、その間、メンバーがなんとか砦の壁側まで到着したようだ。
しかし、堀と壁があっては侵入できない。そう思った時だった。
「え?」
メンバー全員が急に穴掘りを始めたのだった。なんで元々堀があるのに更に穴を掘っているんだ? ってかなんで穴掘り?
俺が攻撃を受けながら困惑している内にもガシガシ掘り進めて、気づけば堀の底にまで到着していた。そして、底に着くや否や今度は横方向に掘り始めた。なるほど、壁があるなら下から行けばいいじゃない、を体現してるんだな。
ってか穴ほるの早すぎだろ。みんな前世モグラだったのか?
だが、いつまで経っても壁の内側にメンバーたちは現れなかった。縦に掘るのは慣れてるけど、横に掘るのは慣れていないのか? と思ったが、違った。多分コイツら、クリスタルに直通しようとしてんだ。
こいつらも意外と強かなんだな。なら俺もやるしかねーじゃんか。
「ふんぬっ!」
巨大化した上にさらに筋肉をどんどんと肥大化させる。限界まで魔力を注ぎ込んでパンプアップしていくのだ。いや、正確には魔力に限界はないのだが、肥大化した筋肉を骨が支えるのに限界があるのだ。骨が悲鳴を上げて折れる寸前まで大きくしていく。
このくらいでいいだろうか? もはやぱっと見筋肉ダルマというかゴリラ饅頭といった方がマシな体型になった俺は、腰を回転させ全身の筋肉を使い、地面を思いっきり蹴って、砦を要塞を殴りつけた。
ッドッゴーーーン!
俺は今まで結構爆発とかしてきたんだが、それでも初めて聞く爆音が耳に届いた。
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