第797話 原点回帰
ふぅ、明日はとうとう待ちに待ったクラン抗争かー。どんな形式で行われるかまだ分からないが、抗争なんて物騒な名前が付いてるくらいだから激しいイベントになることは間違いないだろうな。
そんな面白そうなイベントに参加できる権利をくれたフンコロガシのメンバーには感謝しないとだよな。それに、俺の変な特訓にも最後まで付き合ってくれたしな。
今日は、そんな頑張ったみんなには思い切り休んでくれと伝えてある。前日まで詰め込んで明日に響くのは勿体無いからな。最高のコンディションで臨んで欲しいのだ。
そして、今日、俺は何をするかというと、もちろん休む訳には行かない。だって、俺自身はなんの特訓もしていないのだからな。今日休んだらただの怠惰な人になってしまう。
だから、俺は俺で最後の調整をしようと思う。皆があれだけ強くなっているというのに、俺が強くならないのは道理じゃないだろう。
だから、俺は俺の原点にして強さの源である死によって俺自身を強化しようと思う。
最近ずっとできていなかったからな。初心を思い出すという意味でも定期的に行うべきものなのだ。死を体験することによって生を実感する。失って初めて気付く尊さというものに、擬似的に触れられる素晴らしい機会なのだ。
まあ、あーだこーだ言ったところで、今となっては強くなる為の一つの手段、であることには変わりはないんだがな。
でも、どうやって死のうか。パッと思い付く限りの死因は一通り試して、無効化スキルをとってしまったんだよな。だから、俺が今死のうとするなら、貫通を使って死ぬことになるんだが、それだと今度は今までの死因全てが候補に上がってしまう。
あ、そうだ。折角初心忘るべからずみたいなことを思っていたから、死因もそれにするか! 温故知新ともいうしな。何か新たな発見があるかもしれない。
❇︎
俺は始まりの街から続いている森にやってきた。ここは俺の死の始まりであり、冒険の始まりでもある。
前にも戻ってきたことがあるが、やはり思い出深い土地であることには変わりないな。
そしてここに戻ってきたということは……そう、アイツに殺される為にきたのだ。
「【貫通】」
さあ、来いホーンラビットよ。全ての称号、スキルを貫通してある。つまり俺はあの時の俺ということだ。
お前も何も変わっていないよな。目が合ったら問答無用で頭突きだもんな。でも、そんなお前がいと
グサっ
「うっ……!」
あれ、こんな痛かったっけ??
そんな俺の困惑などお構いなしに、この角兎は俺に向かって突進してきた。相変わらず物凄い瞬発力だ。そして、その迫力に気圧されたのか、俺は反射的にガードしてしまった。
グサっ
「いいいっっ!!!」
たっ!! え、切実にこんな痛かったか? それになんで俺はガードしてしまったんだ? 早く死んだ方が効率的にも痛み的にも圧倒的に良いのに、なんでガードして痛みを長引かせてるんだ……
あっ、また来……
俺は久しぶりに始まりの街の広場で目覚めた。でも、この感覚もとても懐かしいな。だが、ホーンラビットに関しては思い出を美化しすぎてしまっていたようだ。あれほどまでに痛かったとはな。
恐らく以前には感じていなかったであろう、イラつきすらも感じてしまっていた。うん、それは良くないよな。だって、俺に死を教えてくれているわけだからな。感謝の心を持って殺してもらわなければ。
そうして俺はその後、何度も何度も気の済むまであの角兎に殺して頂いた。
覚えておけよ、ホーンラビット。いつかは絶対に根絶やしにしてやるからな……!
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