第795話 マグゾム


「今日は、皆さんがどれほど強くなったのかを試して貰いたいと思います!」


 今目の前にはフンコロガシの全クランメンバーが集合している。クラン抗争イベントまで残り二日、最後の調整だ。


「この一週間弱、強くなる為に大変な思いも沢山したと思います。しかし、その努力は確実に身を結んでいます。それを今から確かめましょう!」


 今日の目標は魔王城、第三階層の攻略だ。


 今までは一階層ですら手こずっていたのだが、それが果たしてどこまで成長したのだろうか? 俺自身とても楽しみだ。


「では皆さん、今から魔王城の三階に向かいます! 相手も強いとは思いますが、今の私たちなら絶対に倒せます! 私も全力でサポートしますから、一緒に頑張りましょう!」


 皆んな、今まで戦っていた場所よりも強い場所に行こうとしていることに少し困惑気味のようだ。


 でも、その中でも自分の力を試したい、そんな目をしている者もいる。そんな人達には是非頑張って欲しいな。


 それに、魔王城は俺のホームだからな。万が一にも危険はないから伸び伸びと戦って欲しい。ま、そんなことを知る由もないのだろうが。


「では、行きましょうか」


 今回、このクランメンバーを迎える為に、この第三階層を少し改装した。


 そもそも今現在、プレイヤーは第二階層より先には行かせないつもりで、第三階層以降は特に何も手をつけてなかった。


 だがこれを機に、この階層は「分裂と溶岩の間」へと転生させた。


 担当従魔はペレとゾムだな。


 ペレに溶岩地帯を作って貰って、ゾムに無茶苦茶分裂してもらって、その一人一人にマグマを取り込んで貰った。


 そう、此処はとにかく暑くて、とにかく敵が多い、がコンセプトになっている。


 しかも敵がゾムの分体だから一、二階と違ってそこそこ手強い。このゾムの分体にどこまで対応できるかで彼らの成長具合を測ることができるだろう。


 そんなこんなで第二階層のボス担当である堕天使ズに死んだフリをしてもらって俺たちは三層に到着した。


 ギィイ


「うぉっ、」


 やっぱりかなり蒸し暑いな。俺は変温無効を持ってるから暑さには強いのだが、そのせいで逆に湿気を感じるな。


「では皆さん、頑張って下さい!」


 そういって俺は後ろへと下がった。クランメンバー集団の前にはゾムの分体ーー名前はマグマゾンビスライムというらしいーーがいる。さて、どう動く?


「へっ、どんな奴が敵かと思えば、ただのマグマスライムじゃねーか! 俺たちの敵じゃねー!」


 そう言って一人の男がマグゾンイムに飛びかかった。不味い、これは死亡フラグってや


 ジャギンッ!


「つっ……!?」


 その男の剣は一撃でマグゾムの体を切り裂いてしまった。


 え、今のは完全にやられる流れじゃなかったのか? 今ので勝てちゃうならこの階層にもう敵はないんじゃないか?


 今回、流石にペレの出動はやめておこうとおもってたんだけど、もしかしたら出番はあるかも知れない。


 その後も順調にゾムの分体を倒していき、第三階層のほとんど全てを回ってしまった。


 ってかそもそも、クランメンバー全体で動いているから多少の戦力差は数の利で軽くひっくり返せてしまう。


 だが、本番はクランvsクラン、つまり相手も同じ数だけいるのだ。


 あ、そうだ。なら、マグゾムもおんなじだけ用意すればいいじゃん。


 さあ、擬似クラン戦、五十体の敵に対してどうでるかな??


 ジャギンッ! バタバタバタ。


「え?」


 ゾムに頑張ってもらって、用意した五十体ものマグゾムが、モノの数秒でいとも簡単に全滅させられてしまった。


 ……え、なんか思ってたのと違うんですけど??







————————————————————

マグマゾンビスライム→マグゾンイム→マグゾムです。


個人的にはマグゾンイムはマグゾニムと表記したかったです。


ん、マグゾニムってなんかカッコいいな。

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