第790話 やらかしてしかいないリーダー
「うおーやってるやってる!」
俺が魔王城の第一層に到着すると、そこにはもう既に二十名くらいのクランメンバーが集合していた。
一人が攻撃して、ダメージを食らったら交代して、回復して、みたいな陣形を組んで安定して戦っている。うん……
「弱いな」
だって、第一層って初心者向けエリアだぞ? それにこんな頑張って戦うレベルなんて勝てるわけがない。これ、クラン抗争無理なんじゃないか?
「あ、ライトさん!」
俺がそんな絶望の眼差しでその様子を見ていると一人の男がこちらに気付いて近づいてきた。その男は山田太郎さんだった。
「ど、どうですかねウチのメンバー達は。もともとそこまでガチ勢じゃないので戦闘に関しては全然なんですが、地下拠点を作ったことでなんとか皆が安定的に戦えるようになったんです! 中には強い人たちもいるんですけどね……」
「そ、そうか」
その強い人たちも弱い人たちの為にここで戦っている、っていう状況なのか。それは強くなれるものもなれないだろうな。
「クラン抗争まであとどのくらいでしたっけ?」
「は、はい! あと一週間ほどですね」
うん、時間がない。これは早急に手を打たないといけないみたいだな。
「よし、では皆を地下に集めてもらいませんか? これからのことについて少し話したいことがあります」
「は、はひっ! い、今すぐ集合させます!」
ん、山田さんが何かに怯えているようだったが、何かあったのだろうか? まあ、兎に角皆に伝える言葉を考えないとな。
❇︎
俺は今、地下の教壇の上に立っていた。
「では今からこのクランを強いグループと弱いグループの二つに分けます。選考基準は魔王城第一階層を一人で攻略できるかどうかです。強いグループの方は魔王城第二階層を皆で攻略し、ひたすらレベル上げをしてください。そして、弱い方のグループは……私と秘密の特訓をしましょう」
よし、これでいいな。少し無理やり過ぎて反発が起きるかもしれないが、それも抗争に勝てば許されるだろう。だから、それまでの間は我慢してほしい。
そして、目の前の集団が綺麗に二つに分かれた。
「では、強いものグループの皆さんには私の分身をつけさせますね。回復要因として使えると思うので活用してあげてください。では、頑張ってください」
ふぅ、ガチの人とのコミュニケーションが久しぶりすぎて少し緊張してしまうな。ゲームのNPCなら最悪とんでもないヘマを犯してもNPCだし、って割り切れるけど、ここでなんかあったらもうこのゲームからおさらばしないといけないんだろうな。
だから、ちゃんと敬語を使うし、言葉もしっかり選んでる。ただ、皆が思い詰めたような顔をしてるのが少し怖いんだよな、緊張する。
あーあー、友達ってどうやってなるんだっけなー。
あ、そうだ、弱いものグループの方には今から指示出さないと。
「では、皆さんには今から、死んでいただきます」
俺がその言葉を発すると、そこにいた弱いものグループの全員の顔が真っ青になった。
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