第770話 実験と褒美
「あ、魔王様……ステータスがとんでもないことになってます!!」
俺がメガネくんに強制進化を施すと、光の中から現れた彼は開口一番、そういった。
「とんでもないこと? それは何がどうなっているんだ?」
「あっ、はい。自分のステータス欄を見ると、元のステータス、そして更に称号による補正値が記載されていたんですが、今回陛下によって強化してもらったおかげで、更にそこに倍率が表示されるようになったのです!」
「倍率、だと?」
「はい、今はSTRに1.1倍という表記が出ていますね。陛下が先程の強制進化でどれだけのSPを消費したのかが分からないのでなんとも言えないですが、もしSPを投入すればするほど倍率が高くなるのならば、これは革命ですよ!?」
メガネくんが興奮した様子でそういった。
確かに、ステータスが足し算ではなく掛け算で強化される、というのは今までにないものだな。それに、元のステータスが高ければ高いほどその恩恵は大きくなっていく。これは革命になりうるかも知れない。
「一つ確認してもいいか? その倍率は元のステータスに掛けられているのか? それとも補正後のステータスに掛かっているのか?」
これは俺にとってかなり重要な問題だ。元のステータスは全プレイヤーの中で最弱だからな。元の、とか言われたら革命とかただの夢物語になってしまう。
「は、はい! どうやらステータスは補正後に倍率が掛かっているようです! これならステータスをあげる意味もありますし、倍率を大きくする意味も両方ありますね!」
ふむ、確かにそれは中々良い情報である。これで一先ず俺にも使えるということが分かった。だが、この後が問題だ。
「おい、もう一度強制進化を行うぞ。今度はSPを二ポイント投入する」
「はいっ! かしこまりました!!」
なかなか元気のいいモルモットだな。こちらも実験をしていてまるで心が痛まないぞ。
「【強制進化】」
今度は先程の二倍、SP二ポイントを素材として使用した。果たしてどうなるのだ?
「あっ、陛下! 今度はVITに倍率がつきました! あれでも、1.2倍になっていますね。もしかして倍率が掛かるステータスは抽選で倍率に関してはSP消費量に依存するようになっているのかもしれません!」
よし、これはきたな。完全に俺の望む方向にことが進んでいる。とても嬉しい。
だが、注意しなければならないことがある。それはSP一ポイントで1.1倍、そして二ポイントで1.2倍、ということは三ポイントで1.3倍、四ポイントで、という風に徐々に増えていく仕組みとなってしまうことだ。
もちろん、それだけ強力で、二倍なんかになった時にはとんでもない強さを発揮することだろう。だが、気にせずに使っていたら思いの外すぐになくなってしまうってことがあるから注意だな。
それに倍率が掛かるステータスがランダムというのも扱いづらいな。
あ、そうだ良いことを思いついた。
「よし、皆を集めよう」
❇︎
皆を謁見の間に集めると俺は言葉を放った。
「皆の者! これまで私についてきてくれてありがとう、私はとても感謝している。そこで、私はお前らに感謝の気持ちを形として贈ることを決めた。それは、私のSPだ。SPは私が稼いだ経験値からしか手に入らぬ、いわば私を形作るものである。それをこれからは優秀な手柄を残したものに褒美として授けることにする。皆、これからも励むのだ!」
ふっふっふ〜、これでみんなの士気も爆上がりしたところだろう。そして俺はここでこっそり自分にだけSPをたんまりと注ぎ込んで自分も最大限に強化するのだ。
「……」
自分には強制進化できないの忘れてた。
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