第768話 ペースアップ


 俺はハーゲンと共に何処かも分からない山脈の上に来ていた。なるべく人が居なさそうな所を選んだらかなり荒れ果てた場所まで来てしまったのだ。


『よし、じゃあハーゲン、ひたすらモンスターと戦いまくって強くなるか!』


『はいっす!』


 俺らはモンスターを見つけては倒し、見つけては倒し、というのを繰り返していた。


 こんな基本的なレベル上げなんていつぶりだろうか? 少なくともこのゲームの中で経験値の為だけに行動したことがあまり、というか殆どないから、小さい頃に遊んだゲームくらいなものだろう。


 今回もハーゲンの為であって自分のためではないからな。俺にとって経験値はレベルを上げる為に使われていない。今までその全てを修羅の道を歩む為に注ぎ込んで来た。


 だが、破戒僧となった今、経験値を何に使うのか、何に使えばいいのか、正直な所分からない。


 死ぬことでステータスが上がるようになってしまった今、SPを使う場所が無くなってしまったのだ。経験値を稼ぐよりも死ぬ方が手軽で効率が良いのだからな。


 どうせ経験値を稼ぐのなら何かに使ってみたいのだが……


「あ、そうだ」


 SPを素材にして強制進化させることはできないだろうか? どんな素材でも魂でもできたのだからもしかしたらできるかもしれない。


 そして、仮にできたとしたらどのように作用するのだろうか?


 単にSPが譲渡されるだけ、っていうのは考え辛い。なぜなら単に素材なしでも強制進化させるだけで、の対象となったモンスターは進化してしまうのだからな。


 これはかなり気になるな。もし、ハーゲンが良しとするなら試してみても良いかもしれない。


 それにもし嫌だと言っても適当に捕まえるか、堕天使たちにでも実験させれば良い。アイツらは実験対象としてはかなり優秀だ。


 元々が殆ど同じであるから比較もしやすいし、魔王軍の主軸ではないから思い切ったことをしやすいのだ。


「ん、」


 そういえば強制進化ってプレイヤーにも使うことって出来るのだろうか?


 もし出来るのならばウチのメガネくんを手軽に強化することができるぞ?


 これは一気に調べたいことが増えたな。


 その為にも今はSPを貯めないとな。実験するには幾らあっても多すぎるってことはない。


『ん、ご主人様どうしたっすか? 何かあったっすか?』


『大丈夫だ、少し考え事をしてただけだぞ。よし、ハーゲン少しペースを上げるか!』


『了解っす!』


 危ない危ない、ハーゲンは良く俺の事を見てるな。集中してないなんて思われたら俺の立場がなくなってしまうからな。


 ここからペースアップしてちゃちゃっとレベルを上げてしまおう。


 ハーゲンたち従魔にレベルの概念があるかは分からないが、戦えば戦うほど戦闘勘も研ぎ澄まされていくだろうし、強くなることは間違いない。


 やっぱり強くなるって良いな!


『ん、やっぱりご主人様何かあったっすか? さっきから動きが鈍いっすよ? 一旦休憩しますか?』


 おっと、これは不味い。とうとうハーゲンにしっかり気を遣わせてしまった。


『ん、大丈夫だぞ? 俺はまだまだイケるぞ。よし、ならもっとペースを上げるか!』


『そうこなくっちゃっす!』


 俺はその後三日間、ゲームのやりすぎで筋肉痛になった。シンプルにリアル状態異常として。


 レベルは……沢山上がった。

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