第766話 筆頭従魔の気持ち
『ご主人様、諜報部隊の人間の件に関してですが、当初と比べて幾分かは死ににくくなってきたようです。今では、我々の攻撃を数発は耐えうるくらいには成長したようです』
念話でペレからそんな伝言があった。
メガネくんの修行には毎日シフト制でウチの従魔たちが相手をしてくれている。その実態はただただ殺しているだけみたいなんだが、最近は死ににくくなったという。
恐らく、俺も持っていた百の屍を越える者でステータスが補正されてきたんだろうな。ペレの攻撃を何発か耐えられるって相当良い感じじゃないのだろうか?
もう辞めても良いだろうが、せっかくなら千回くらいは死んでもらってから解放しよう。そっちの方がステータス補正が大きいだろうからな。
俺たちは俺たちでもっと軍の強化をしないとな。前回、悪魔戦で結構ボロボロにされちゃったからな。絶対に借りは返す。
その為には最低で、ハーゲンがやられた敵にウチの従魔が単騎で戦っても勝てるくらいには仕上げていきたい。あわよくば余裕でボコれるくらいがいいな。
まあ、その為のプレイヤー強化計画でもある。しっかりと時間をかけてじっくり育てていく。
そして、俺が今からすべきことは……ハーゲンの強化だ。
ハーゲンは復活した影響で俺が服従させた頃の姿に戻ってしまった。今まではグリフォンのような姿だったのに、ただのハゲタカに戻ってしまったのだ。
だが、これは逆にハーゲンを更に強くさせる好機とも言える。何故なら今までは適当に強制進化でキメラに仕立て上げてしまったのだが、ハーゲンと意見を交換しながらより洗練された強さを手に入れることができるかもしれない。
『というわけでだ、ハーゲン。お前はどんな風になりたい? どんな強さが欲しい? 気兼ねなく言ってくれ』
『どんな強さが欲しい、っすかー。そうっすね、俺っちは今まではキメラで色んなことができたっす。空を飛べたり、陸を走ったり、魔法を撃てたり、爪で攻撃したり。でも、他の従魔を見てるとみんな特化してるっすよね、だから俺っちもせっかくなら特化したいな、って思ったっす! でも、最終的にはご主人様の好きにして良いっすからね!』
うん、なんていい子なんだ……
それにしても特化かー。確かにそうだな、海馬は唯一の水棲(陸でも普通に生きれる)だし、ゾムは未確認生命体、デトは毒、アイスは氷、ペレはマグマ、アシュラはパワーって感じか。
アスカトル、スカルボーンは比較的対応幅が広いがそれぞれ目立つ個性がある。アスカだと、配下生成や奇襲、暗殺。スカルは転移によるコンビネーションって感じだな。
ん、でもこの流れだとハーゲンは空担当だよな? それが嫌なのか? 陸を走れるって言っても移動手段としての括り方もできる。あー、でも色んな方向に手を出しすぎたから自分の個性が霞んでしまったのか。キメラっていうのもそれを加速させてしまったのかもしれない。
『そうか、今までお前の気持ちも考えずに勝手に強化してごめんな』
これからはちゃんと従魔の意見を聞こう。
『あ。謝らないで欲しいっす! ご主人様が俺たちを強くしてくれてるのは間違いないことっすから! それに、あくまで俺っちのはワガママっすから……』
『そのわがままが聞きたいんだよ』
俺は思わず笑みが溢れた。親バカな人の気持ちが少しわかる気がする。
『ってことは、お前はもっと空に特化していきたいっていう気持ちなんだな?』 『そ、そうっす。陸は、海はみんながいるっす』
そうだよな。もう従魔はハーゲンだけじゃない、それに従魔だけじゃない、仲間はたくさんいるんだ。メガネくんも、弟子の吸血鬼も。だからもう好きに強くなってもらおうじゃないか。
『あ、でもこれだけは忘れんなよ? ハーゲン、お前は俺の中でも最初の従魔だし特別な存在だ。筆頭従魔として、これからもみんなを引っ張って言ってくれよな!』
『ご、ご主人様……はいっす!』
『よし、じゃあ早速鍛えにいくか! 筆頭従魔のくせにみんなより弱かったら話にならないからな!』
俺は久しぶりにハーゲンの背中に乗って空を飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます