第760話 栽培漁業
「は、ハーゲン……」
『ん、んん。あれ、ご主人様どうしたっすか? そんな顔して。それよりなんでこんなとこいるんすか?』
そこに居たのは前と何も変わらないハーゲンだった。しかし、変わってないのは中身だけで、見た目は大きく変わってしまったようだ。
そりゃスワンプコンドルの体を使ってキメラが生み出されたらそっちの方が怖いが、ハーゲンの姿は俺が仲間にした時に戻ってしまったようだ。
だが中身は正真正銘ハーゲンだから何も問題ない。また一から強くなればいいだけだ。
『あれ、俺っちなんでこの姿に戻ってるっすか? それに、確か俺っちあの悪魔に……も、もしかして、俺っち死んでたっすか?』
まさか自分で答えに辿り着くとは思ってもみなかった。記憶に関しては欠落等は無いようだ。本当に安心した。
『……ふふっ、そうだぞハーゲン。俺が生き返らせてやったんだからな。だからこれからはもっともっと二人で強くなって、ずっと一緒にいような。もう、もう離れるんじゃないぞ?』
『ご、ご主人様……はいっす!』
これでこそハーゲンだよな。感動の再会に心が潤いかけたが、気合で耐える。これからやるべき事は沢山ある。
当面の目標は配下の大幅な強化だな。今までも色んな方法で強化を行ってきたつもりだが、根本的に見直して今までとは段違いに強くするのだ。
その為にやるべきことをハーゲンがいない間、俺なりに考えてみた。
それはプレイヤー達の強化だ。
今までは自分が、自分の軍が強くなることにしか興味が無かった。確かに今まではそれで良かったのかもしれないし、現にここまで強くなることができた。
しかし、更にこの上を目指そうとなると、強い敵を倒して得られる経験値が必要になる。しかも莫大な量のが、だ。
そして、経験値効率という点で考えればプレイヤーほど都合の良いものはいない。死んでも自力で強くなってまた挑戦してくれるのだからな。
だからこそ、プレイヤーを育てて狩る、という言わば農業的強化を目指そうと思ったのだ。
そしてプレイヤーを育てる為に思いついたのが魔王城の活用だ。
今現在、魔王城はほとんど活用出来てない状況にある。防御面でいえばそれは素晴らしい事なのだが、資産という面で見ればそれは常に赤字が出ているようなものだ。
折角あるのに何も生み出せていないんじゃそれは廃墟と一緒だ。
そして魔王城を上手く活用できれば配下達が勝手に自分で強くなるのを促進することもできるのだ。
今までは従魔の血みどろまでの鍛錬によって強化してきたが、それを実戦で更にブーストするのとができるのだ。
それにプレイヤーを利用することの利点は何も経験値効率だけではない。その強みは多様性にある。
人間が俺しかいない魔王軍ではどうしても俺の考えに左右されてしまう。それだと常に同じ考えしか生まれなくなってしまう。
配下達が脳筋なのもそのせいではないかと最近は思うのだ。
だからこそ、プレイヤー達が俺たちに勝つ為に必死に考えた知恵や戦略を吸収する。それが目的でもあるのだ。
よしじゃあ方針が決まったところで魔王城を改装していきますか。今のままではあまりにも難しすぎるということが分かった。もう少し簡単に、それこそ初心者でもご老人でも気軽に遊びに来れるような、そんな場所を目指してみよう。
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