第759話 魔王に魂を攫われる


 魂なんてものはそこら中にあった、いや、歩き回っていた。


 俺は空中から見渡しどこに行こうか、誰からもらおうかを考えていた。


 ん? 普通に倒して魂をゲットしている状態になるのだろうか? もし、ならなかった場合に時間ロスが激しいから最初から確実な方法にするか。まず、手始めにあの人にするか。


「【死骸魔術】、奪魂」


 俺はまるでトンビが油揚げを攫うかのように、空中から接近し魂だけを抜き取った。するとそのプレイヤーは崩れ落ち、ポリゴンの破片となって消えていった。


 ってか、これだけで相手を倒せるなら他何もいらないのでは? このスキル強すぎるだろ。でも、流石にノーリスクでポコポコ抜き取れるのは強すぎだから何か条件があるのかもしれない。自分よりも格上からは抜き取れない、とかな。


 そこから俺は隠遁、天駆、韋駄天走を駆使して、至る所に居たプレイヤーたちの魂だけを抜き取った。決して命までは奪っていないのでどうか勘弁していただきたいものだな。


 ん、死んでるって? 勝手に死んだことまで俺のせいにしてもらいたくはないな。必ずしも俺が原因とは限らないからな。まあ、もし文句がある奴がいたら是非魔王城までお越しくださいって感じだな。その時は丁重にお迎えするつもりだ。


「九十九、百、よし!」


 これで必要数が揃った。早く研究所に戻ろう。


 ❇︎


 ガコッ、ストン


 ふん、もう流石に引っかからないぞ?


「爺さん、帰ってきたぞ。全て集めたんだが具体的にどうすればいいんだ? 教えてくれ」


「ん? あとは死体を前にアイテムを掲げるだけで大丈夫だと思うぞ? それよりも物凄い速さじゃの。悪魔もそのくらいのスピードで狩ってくれればいいのじゃが」


「そうか、ならじゃあな」


 俺は爺さんから話を聞くとすぐさま場所を移動した。今度は湿地帯だ。なぜここに来たかというと、ここはハーゲンと初めて出会った場所だからだ。


 ドサッっとスワンプコンドルの死体を百体重ねた。あとはもうこの状態でアイテムを掲げるだけで、魂を持っていれば大丈夫だという。……少し緊張するな。


 大丈夫だとは分かっていても、もしかしたら、とか考えてしまう。でも、この行動をしなかったら永遠にハーゲンは戻ってこない。なら、


 俺はハーゲンの心臓を取り出し、天に掲げた。


「頼む、ハーゲン、戻って来てくれ!」


 ドクン


 俺が手にしている心臓が大きく脈を打った。そして再びドクン、と。かなり周期は遅いが一定のリズムで心臓が鼓動を再開した。心臓が動き始めたってことはもう生き返ったってことか?


 いや、まだまだこの目で見るまでは安心するな。もし、もしも条件が間違ってたりしたら、急にプレイヤーが襲って来たりしたら、俺はすぐさま対応しなければならない。


 そんな面持ちで俺はずっと見守っていた。ハーゲンの心臓は俺の手元から一人でに離れて、今は死体の上へと降り立っている。


 ドクン、ドクン、ドクン、と少しずつではあるもののそのスピード喪早まってきている。これが正常のスピードに戻った時、がその時なのだろう。


 固唾を飲んで見守った。心臓の鼓動がやけに大きく聞こえたし、体が揺さぶられるように感じた。


 そしてその音が徐々に早く、小さくなっていき、もうほとんど聞き取れなくなった時、全ての死体が眩い光に包み込まれた。そして、それが収まるとそこに姿を現したのは……


 ハーゲンだった。 

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