第742話 一匹と一匹の戦い


『よし、じゃあアスカとデトには左の扉を開けてもらう。どんな敵が待ち受けているかはわからないが、心して戦ってくれ』


『『はっ、かしこまりました』、キシャ』


 アスカトルとデトの組み合わせが一体どんな化学反応を起こすか楽しみだな。


 ❇︎


 私は魔王軍精鋭部隊が一角、暗殺のアスカトルだ。今回は魔王様により直々に悪魔の討伐の命を下された。しかも相手はなかなかに強敵だと言う。ここは私の腕の見せ所だ。


 しかし、一つ問題点がある。それは同じく精鋭部隊が一角、毒亀のデトックス殿がいる、ということだ。


 一人であれば全力を尽くすだけでも良いのだろうが、二人というのは各々が全力を尽くすだけではダメなのだ。お互いが息の合った連携をし、足し算ではなく掛け算を生み出さねばならない。


 そして、おそらくご主人様はその連携を見るために二人でいかせているのだと睨んでいる。


 デト殿の特徴はなんと言ってもその毒だ。私も毒を使いはするものの、デト殿に比べればそれこそ児戯に等しいだろう。毒の威力、豊富さそして扱いの巧さ、どれをとっても私の遥か上をいっている。


 しかし、私にも武器はある、暗殺者としてのスキルだ。隠密、奇襲、撹乱、情報収集、そして圧倒的な機動力、これらはデト殿には勝っているはずだ。


 だから、まず最初の作戦は互いの得意な部分を生かした立ち回りというものを心がけていきたい。


『デト殿、私が速さを生かした陽動を、デト殿は毒の威力を生かしたフィニッシュを担当してもらうというのはどうだろうか、キシャ?』


『なるほど、了解いたしました』


『何か案があればいつでも言ってくれ、キシャ。必ず二人で悪魔を倒すのだ、キシャ!』


『もちろんでございます、頑張りましょう』


 ギィイイ


 扉を開けた。今思うと、魔王様が一切手を出さない戦闘というのも久しぶりかもしれない。いつぞやの、の時以来ではなかろうか?


 魔王様に忠誠を示す為、魔王様の威光をより強大なものとするため、暗殺者アスカトル、いざ尋常に参る。


「ん? 誰かと思えば……誰だ? 亀と、お前人間じゃないよな? どちらかといえば俺らに似ているとは思うんだが、何故そこから入ってきた?」


 似ていとは笑止千万だな。私は魔王様にお使えしているのだ、貴様のような俗物に負ける道理がない。


「配下生成、キシャ」


「ほう、あくまで戦うつもりなんだな。人間でもないお前らに俺が倒されると思ってんのか? まあいいぜ遊んでやるよ」


「四方雲界、キシャァアアア!」


 四方雲界、これは生成した配下である子蜘蛛たちで敵を囲み全員で糸を噴射することによって敵の動きを阻害、封印するという技だ。


 相手は悪魔、これくらいで丁度良い様子見になるだろう。


「へぇ、意外とやるじゃん。だけど、まだまだだな」








——————————————————

従魔同士は念話で会話できます。

従魔は敵の言葉を理解できます。

従魔は念話以外では自分の種族の言語しか話すことができません。


つまり、悪魔からすれば無言で襲われている状況になります。

ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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