第736話 彼の体感時間
俺が悪魔城に着いてから、大体一時間くらいが経過しただろうか、俺は未だに城の中に入れずにいた。
特段相手が強いわけではない、ただただ相手の数が多い、多すぎるのだ。倒しても倒してもどこからともなく補充される悪魔たち。
強さは全て同じ個体ではなく、体感的にはだが、俺が一番最初に倒した騎士爵から男爵級くらいまでの強だと思う。しかも、男爵級に至っては一撃で死なないこともあるから、それが戦闘時間の長引く原因にもなっている。
ちょっとこのままでは流石に埒が明かないので、助っ人を呼ぼう。ウチの従魔であれば誰でも即戦力にあるだろうが、広範囲殲滅型として優秀な子にしよう。
「海馬」
アシュラとも迷ったが、相手のレベルがそこまで高くないのならば、海馬がいいだろうと判断した。その理由はなんといっても九つもある頭だろう。同時に九方向に攻撃できるのは強すぎる。
それに、あまり海馬と一緒に戦った記憶がなかったからな。せっかくならちゃんと絆を育んでおきたいなと思ったのだ。
『海馬、兎に角蹴散らせ、周りにいる敵をひたすらに蹴散らすんだ。お前なら余裕だろう?』
『は、かしこまりました。お役に立てるよう尽力いたします』
おー、七色ではなくて九色の綺麗なブレスだなー。九色ということは七色に加えて赤外線と紫外線でも加わっているのだろうか?
っと、流石に俺もふざけていられない。海馬が来てくれたおかげで随分と楽にはなったが、それでも敵の殲滅まではまだまだ遠い。俺もガンガンか制していかなければ。
❇︎
ん? おかしい、おかしくないか? 海馬を呼び出してまた一時間くらい経っていると思うのだが、一向に悪魔たちが減らないぞ? 海馬も何度か魔力が枯渇しかけて回復してやったくらいだ。
ここのエリアが超を超えて極難しいダンジョンだとしても、流石にこれはやりすぎなのではなかろうか? となると、この大群を止めるには何か別の条件があるのだろうか?
『ペレ、ここにいる敵の殲滅を頼む』
『は、かしこまりました』
俺は急遽ペレを呼び出して俺の持ち場を託した。そして俺は空中に駆け上がり全体を見渡してみた。
薄暗い黄昏時をさらに煮詰めて禍々しくしたような空に、俺の城よりも何倍も大きい悪魔の城。そして目の前の尽きることのない悪魔の群れ。
何か違和感はないだろうか、見落としている部分はないだろうか。きっと何かあるはずだ。流石に二時間以上も戦闘させることを想定して作られるゲームなんてあってたまるかって話だ。
「あ!」
とうとう見つけた。アイツだ、アイツが全ての元凶だったんだ。
その悪魔は群れの奥の方で独り、延々と悪魔を召喚し続けていたのだ。見た目は男爵級よりも少し強そうな見た目をしている。
つまりはアイツを倒さない限りは先に進めないってことだな。いいだろう、俺が直々にやってやる。
天駆を発動したまま、俺はその元凶に向かって一直線に駆け出し、刀で一閃、首を刎ねた。
「ふぅ、これで終わりだな」
だが、悪魔の襲来はまだ終わっていなかった。
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