第735話 隠しエリア


 俺の目の前に現れたのは然程大きくない扉だった。俺が少しかがまないと通れないくらいの大きさだ。


 だが、その扉の大きさに比べてその装飾がかなり豪華だ。こんなジメジメで鬱蒼とした場所にはなんとも合わないのだ。


 正直なことを言うと、この扉を見つけた時から俺がこの扉をくぐることは決まっている。ただ、見つけ方からもわかるように、余りにもイレギュラーすぎるのだ。


 俺は本当にここに招待されているのだろうか? 入っていいものなのか?


 見つけた時から、なぜか心の中でモヤモヤする感覚が抜けないし、これは初めての感覚だ。


 ただまあ、扉の前で右往左往していても答えは見つからないので、覚悟を決めて入るしかない。


「よし、行くぞ」


 俺は一度デトを返し、単身で扉を潜った。


 ❇︎


「隠しエリア『悪魔城』を発見しました』



ーーー称号《悪魔城第一発見者》

   称号《招かれざる客》を獲得しました。


《悪魔城第一発見者》‥悪魔城をプレイヤーの中で初めて発見する。SPを50P取得する。


《招かれざる客》‥悪魔城を裏ルートから発見する。悪魔からのヘイトが溜まりやすくなり、悪魔への攻撃力が少し上昇する。



 悪魔城、だって? 俺は結構ヤバめの所に来てしまったみたいだ。だって、あの悪魔が何匹もいるってことだろ? しかも、俺が今まで倒してきた奴らよりも強い個体も確実にいるだろう。


 これは心してかからないといけないかもしれない。


 俺は目の前にある門を通り城の中へ向かおうとすると、


「グギャ?」


 小さな悪魔と目があった。言葉を話さないところを見るとかなり低位の悪魔なのだろう。もはや、悪魔とすら呼ばないのかもしれない。しかし、


「グギャギャギャーーーーーーー!!」


 どうやらコイツは警報の役割を担っているようだ。鼓膜が破れるかと思うほどのうっせぇ鳴き声を放って、ソイツ自身はすぐさまどこかへ逃げていった。


 そして、五月蝿い鳴き声が発せられたと言うことは、そう、悪魔達がここへ来ると言うことだ。


「おうおうおう、こんな所に人間がいるなんていつぶりかぁ? 久しぶりに美味い肉が食えるぜぇ! ヒャッハァー!」


 いかにも低位な悪魔だなと思ったら、コイツから感じ取れるオーラも低位だった。しかし、量がヤバい。


 コイツの後ろにもザッと見えるだけで数百体の悪魔がいる。


 初手からフルスロットルっていうわけですか、さっきのダンジョンはデトの独壇場だったし、少しずつ体を動かしていきますか。


「【爆虐魔法】、【韋駄天走】、【藕断糸連】」


 爆虐魔法で近くにいた敵を吹っ飛ばし、韋駄天と藕断糸連で視界に入ってる敵を一掃する。うん、いい感じだ。この調子でいけばなんだかんだいけそうだな。


 でも、ただ不安なのは俺がまだ城の中に入っていない、ってことなんだよな。

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