第734話 虚無


 ふむ、一狩り行こうとは言ったもののいつも通りギルドに行って依頼をこなすだけはつまんないな。


 どこか強いところに行きたいものの、手頃なところがないんだよな。あ、そうだ、ダンジョン行こう。


 ダンジョンなら弱くても攻略するには時間がかかるし、手応えは十分にあるだろう。


 ん、そういえば前もデトックスと一緒にダンジョンに行った気がするな。でもまあ、行くの自体は久しぶりだし楽しんでいこう。


 何はともあれギルドに行くか。ダンジョンがどこにあるか知らないし。


 ❇︎


「だ、ダンジョン、ですか?」


「はい。ダンジョンに行きたいんです」


「そ、そうですか……こちらもお一人で?」


「はい」


 なんでこんなに一々聞いてくるんだ? いいから早く教えて欲しいんだけど。


「わかりました。そうですね、では王都から南西方向にダンジョンが存在しております。高難易度ですのであまり無理はなさらないように。お気をつけて」


「ありがとうございます」


 王都かー、強そうだな。人間が栄えている場所はモンスター達も活発になってそうじゃん? まあ、やることは変わらないのだがな。


 と、そんなことを思っているともうその場所に着いたようだ。


 見た目は、地下鉄みたいだな。入り口が洞窟になってて、それが横ではなく下に続いているような、そんな感じだ。


「デトックス! よし、行くか」


 今日の主役を呼び出し、早速ダンジョンに侵入する。入り口は階段上になってて、その先には扉があり、その扉を明けて中に入るとその扉は消えてしまった。


 相変わらずダンジョン内はジメジメしていて薄暗い。カラッとしていて、太陽が燦々と照りつけるようなダンジョンはないのだろうか?


 ……ないか。まあ、デトは別に不快に思ってなさそうだし、このままチャチャっと攻略しますか。


 ドピュ、バシャ、グチュ、ジュッ、


 あれデト君? 君強くね? こんな強かったっけ? 敵が弱いだけなのか? さっきからずっと無双してらっしゃるのですが……


 攻撃パターンも多彩で、液体の毒を原液のままぶっかけたり、水鉄砲、水風船みたいにしたり、気体にして毒ガスで殲滅してたりもしてたな。


 こうなってくると固形はあるのか? と思ってしまうのだが、


 ドゴーン!


 もはや毒の物理攻撃となると意味わからない。毒を塗って毒突きって言うレベルじゃないのだ。毒そのもので、毒突きをしている。自由過ぎる。


 そんな感じで強くなりすぎたデトがいればもう直ぐに攻略できてしまうな、そう思った時だった。


『デト、何か感じないか?』


『いえ、何も……』


 俺は確かに感じたのだ。首筋にチクリと刺すような感覚を。でも、それ以降何の反応もないし、デトも感じてない。俺の気のせいか?


 いや、でも今確かに何かを感じたんだよな。折角だし調べてみるか、ここまでハッキリ感じたんだ。何もないわけない。


「【叡智啓蒙】、【己没同化】」


 俺はスキルを使った。久しぶりの全力での使用だ。


 でも、何も感じられない。深く知ろうとすればするほど何もないような、沼の中にいるみたいだ。


「ん?」


 そこには違和感があった。他の場所はどこまででも情報が拾えるのに、そこだけ強制的にシャットアウトされるんだ。


 壁ならその材質やそれがどこまで続いていくか、そしてその向こう側など時間をかければかけるほど、集中すればするほど知ることができる。


 だが、ある一点に関してはどこまで行っても虚無なのだ。


 つまりはそこが怪しい。


 俺がその場所に行くと、そこは普通の壁だった。でも、何がある筈だ。


 ッドゴーーーン!!


 その壁を思いっきりぶん殴ると、そこには……


「扉?」


 そう、どこかに続いていきそうな扉が現れた。

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