第731話 師匠に支障


ーーースキル【悪臭無効】を獲得しました。


【悪臭無効】‥悪臭によるダメージを無効化する。


 うぉっ、すっげーシンプルだな。俺も帰ってきた後、ニンニクが大量にあることが発覚してからは一緒にラーメンを食べて無効スキルを獲得したんだが、ニンニクのダメージって臭いからくるもんだったのか?


 もしかすると、人間に比べてあらゆる身体機能が強化されている吸血鬼は五感も強化されて、その結果ニンニクの臭いが耐えられなくなったのだろうか。


 俺は吸血鬼になってもそこまでニンニクに忌避感は感じないが、それでもダメージは食らう。弟子に関していうと忌避感は消えないのにダメージだけなくなるから変な感じなんだろうな。


「し、師匠、、僕もう……ダメ、です」


「いひひひひひ、毒と臭いのコンボは流石にキツかったみたいだねぇ。ほら、アンタもこの子を連れて帰んな。そろそろ店を開ける時間さね」


 え、今からってもう外は真っ暗だぞ? なんなら深夜なんじゃないのか? あ、そうか、ここは普通の食事処じゃないからな。今からの方がお客さんが来るのかもしれない。じゃあさっさと退散しよう。流石に婆さんの本業に支障をきたしたら不味いからな。


 そんな訳で、なぜか白目を向いて倒れている弟子を担いで城へと戻った。


 ❇︎


「で、どうするんだ? 俺はまだまだ続けられるし、お前に足りないもの、必要なものもなんとなく分かる。つまりはお前の気持ち次第だ。どうする、続けるのか?」


「うっ、ひ、非常に申し訳ないのですが、今回はここまで、ということはできますか? 本当に身勝手だとは思いますが、流石に精神的に参ってきました。それに今でも十分に強化されていると思います。自分がどれだけ成長したのかを実感するためにも、一度向こうに戻ってみたいのです」


 うーん、まあ確かに普通の人にいきなりするのはキツいよな。いつだったか獣人の息子を鍛えた時も三日後くらいには死んだ魚の目をしてたからなー。


 俺ですらこんなに猛スピードでやってた訳じゃないからな。今回はこれくらいにしておくか。


「分かった、休養も大事だからな。では、向こうに帰って自分で何があればもっと強くなれるのか、そして何が自分に足りないのかをよく考えながら一戦一戦臨むことだ。それと、今回手に入れた力をどうやって使うのか、それも常に考えながら戦うんだぞ」


「はい! わかりました!」


 随分と嬉しそうだな。そんなに修行を続けたくなかったのか? それとも婆さんと二人っきりの状態が相当なトラウマになったとか。


「じゃあ、また好きな時に連絡してくるが良い。その時に暇だったら相手してやる」


「はい! ありがとうございます、師匠!」


 そう言って、第一回弟子修行は終了した。まあ、弟子修行とは銘打っているものの、俺もちゃっかり強化させてもらった。吸血鬼になることで無理やり弱点を生み出し、その無効化スキルをゲットした。


 この方法は他にも活かせそうだからチャンスがあればどんどんと試していきたいな。


 よし、じゃあちょっと試したいことができたから、早速それをすることにしよう。


『おーい、デトーちょっときてくれー』


 俺はデトを呼び出した。そう、久しぶりにあの時間がやってきた。

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