第725話 最初の吸血鬼


 俺が弟子の元に帰ると、弟子は瀕死状態に陥っていた。


「あっ、し、師匠! 死にそうです、助けてください!」


 俺を見つけるや否や、助けを求めてきた。そういえば日光の中に放置してたんだったな。だが、まだ無効化スキルを手に入れていないとは、プレイヤーかそうじゃないかで、また進捗状況が変わってくるのだろうか?


「【慈愛之雨】、すまんすまん大丈夫か?」


「はぁー、死ぬかと思ったー! もう、こんな所で一人にさせないでくださいよ! 本当に命の危険を感じましたよ!?」


 本人は他人事ではないからか、とても真剣な表情で俺に訴えかけてきた。まあ、最悪俺には蘇生があるんだけどな。この弟子は目の前で自分の親を生き返らせた事を忘れているのだろうか?


「とりあえずはそうだな、お前が日光によるダメージを完全に無効化できるまではここでの瞑想を続けてもらうからな」


「えー、なんでまたそんな殺生な……」


「お前が選んだ道だろう?」


「うぐっ、が、頑張ります……」


 まあ、最初はその恩恵がいかほどのものか分かりづらいから心折れそうになるのも無理はないよな。ただ、俺みたくなりたいと言った手前、ちゃんと厳しく行かせてもらうからな。


 そして、俺が弟子を見守っていながらウトウトし始めた時、


「し、師匠! つ、遂に日光無効を手に入れましたよ!」


「んお、そうかそうか遂に手に入れたか。これでお前は一歩俺へと近づくことができたな!」


 ま、俺も日光無効を手に入れたから俺と弟子との距離は変わっていないんだけどな。


「それよりもなんで師匠は僕に日光無効なんて手に入れさせたんですか? そんな事をするよりも、もっと力を鍛えた方がいいんじゃないですか?」


「まあ、それもそうかもしれないな。というか、真っ当な疑問だろう。だが、お前は今自分の身に何が起きているかを正確に把握していないようだ」


「自分の身に何が起きたか、ですか?」


「そうだ、お前はたった今、日光という吸血鬼の弱点を完全に克服しているのだ。それは、他のどの吸血鬼もなし得ぬ偉業を達成したということだ」


「い、偉業……!」


「そうだ。強くなることは誰でもできる、そしてお前が多少強くなったところで、お前より強い奴は五万といる。それは吸血鬼の中においてもそうだろう。

 だが、日光を無効化しているのはお前だけだ。それがどれだけアドバンテージになると思う? 日光が出ている間、お前は他の吸血鬼に対して無双できるのだ」


「はっ……! そ、そういう事だったんですね! さ流石です、師匠! 俺、これからも一生ついていきます!!」


「おう、そうか。なら早速次のステップに移るとするか」


「次のステップ、ですか?」


「おう、次は神聖魔法を克服しに行くぞ」


「え?」

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