第722話 弟子


「召喚を要請されています。召喚しますか?」


 ……はい?


 え、これどういうことだ、何が起こってるんだ? って、え、なんか目の前に魔法陣が現れたんですけど! もしかして、「はい?」って疑問を呈したのが了承に取られたってことか?


 でも、召喚を要請するってどういう意味……


「あっ」


 そこに呼び出された人を見て、俺は何が起こったのかをだいたい察してしまった。そこにはなんと、吸血鬼がいたのだ。


「し、師匠! あっ、じゃないですよ! もう、どれだけ待たせたら気が済むんですか! い、いや取り乱しました。師匠が大変お忙しい身である、というのは重々承知でございます。そんな中、私は長い間、呼ばれるのを待ち望んでいたのです」


 そ、そういえば俺にも弟子なんかいたな。いや、忘れていた訳じゃないぞ? ほ、ほらだってあのー、そう、魔王城の第九階層も一応、おじいさんと兼用だけど、吸血鬼のカイト君に守らせる予定だったし……


 はい、ですがそれ以降は完全に忘れていました、ごめんなさい。言い訳なんて見苦しい真似はせず、ちゃんと後進の育成に励みます。


「そんな中、一筋の光が私に差しました。毎日師匠に会いたいという願いを抱いていましたら、ふと天から、召喚要請を行いますか? という声が聞こえてきたのです! 私はいても立ってもいなくなり、すぐさま了承したところ、ここに連れてこられた次第でございます」


「そ、そうか」


「あっ、もしもお忙しいようでしたら、引き返しますが……」


「い、いや大丈夫だ。おそらく天も俺がちょうど暇になったタイミングを見計らってお前に声をかけたのだろう」


「はっ、ということは……!?」


「うん、これからお前をみっちり鍛えてやるぞ」


「ありがとうございます!!」


 おいおい、随分食い気味だな。鍛えてやるぞの、鍛え、くらいでもう返事をしてたぞ? まあ、それだけ俺に対する思い、いや、強くなりたいという気持ちが強かったんだろうな。


 それにしても、以前出会った頃に比べてだいぶカッコ良くなったか? いや成長したと言った方がいいかもしれない。大人の対応が取れるというか、色々と成長している気がする。もちろん、戦闘力に関してもだ。


「なあ、お前俺と会っていない間、修行でもしたのか?」


「はいっ! 師匠に再びお目にかかる時にまで強くなろうと必死でしたので! まあ、なかなか会えませんでしたけど……」


「それはごめん! 本当に申し訳ない! 今日からみっちり鍛えてやるからな! それこそ俺の精鋭部隊に劣らないくらいには強くしてやるからな!」


「あっ、すみません、冗談ですよ。私は我儘を言って弟子にしてもらった身ですので、こうして時間が経った今、教えを請えるだけでも幸せというものです」


「そ、そうか……」


 やっぱり全体的に成長してるよな。もはや成熟と言った方がいいレベルだ。少し前までゴリゴリの反抗期で親を殺したとは思えない好青年っぷりだぞ?


 でも、まあ確かに親に再会できたというのは大きな要因なのかもしれないな。


「あ、あのー、一つ質問をしてもいいですか?」


「ん、なんだ?」


「はい、先ほどおっしゃられた精鋭、というのはなんですか?」


「あぁ、そうか、お前はちゃんと見たことが無かったな。それに、その時からだいぶ増えているだろうし、改めて紹介するか。出てこい、お前ら」


「っ……!?」


 俺が配下九名を呼び出すと、一斉に召喚された。流石に全員集合となると流石にオーラやプレッシャーが凄いな。みんな粒揃いだ。あ、堕天使たちはまだ精鋭とは言えないから今回は呼んでない。


「これが俺の持つ、魔王軍の精鋭達だ。では、改めて聞くとしよう。お前は、本当に強くなりたいんだな、この精鋭たちと肩を並べる程の強者に」


 これは大事な確認だ。俺の修行はちょっと荒々しいから、覚悟が必要なんだ。


「はい! よろしくお願いしますっ!!」


 ウチの配下たちに圧倒されながらも、俺の弟子である吸血鬼カイトは力強く返事を返した。


 よし、では獄界から帰ってきた魔王の、地獄の特訓を始めるとするか。

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