第721話 直属護衛


 炎のドラゴンの喉元をわしゃわしゃしてあげると、意外にも嬉しそうに反応してくれた。


 俺を対象に攻撃してたけど、俺が主人だってことは理解してるみたいだな。にしてもどれだけ触っても全然熱くない。感じるのは生命の温もりだけだ。


 ただし、肌触りは少し独特だ。いわゆる動物の毛並みとは少し違くて、シルクのようなスベスベした肌触りのようにも思えるし、逆にゴツゴツとした鱗のような感じでもあるのだ。


 そして、このドラゴンは従魔でも、配下でもなく、個人的なペットにするつもりだ。


 ペットといえば従魔にアイスがいるが、アイスは配下の中でのペット枠ということでいいだろう。


 分かりやすく言うなれば、俺を頂点とする魔王軍のピラミッドの中に含まれるペットがアイスで、含まれない俺に直属のペットがこのドラゴンって感じだな。


 まあ、戦力としては申し分ないだろうし俺の護衛って言ったら分かりやすいか。


「よし、今日からお前は俺の直属護衛に任命する。俺に迫り来る脅威を全て焼き払うのだ!」


「ガォゥッ!!」


 うん、いい返事だ。ところで、なぜ俺が直属護衛なんて面倒くさい役職を与えたかというと、俺個人の力が欲しかったのだ。


 獄界に行ったのも俺の強化の目的だったし、配下じゃなくて俺自身を強くしたかったのだ。元々は鬼火もその為のスキルだったからな。


 それなのにそのスキルから俺の配下が生まれてしまっては元も子もないというか、俺の強化じゃなくなる気がして、このようになったってわけだ。


 酷い言い方をすれば、俺の武器の延長線上にこのドラゴンがいるって感じだな。


 まあ、別に配下達も俺の武器になってくれるだろうが、上に立つ魔王としての、ひいては俺個人としてのエゴだな。だって、従魔たちよりかは強くいたいじゃん? つまりはそういうことだ。


 よし、じゃあドラゴン君の試運転と行きますか!


 ❇︎


 人目のつかない山岳地帯でドラゴンを軽く使ってみたのだが、分かったことがいくつかある。


 まず一つ目はサイズを自由に変えられる、ということだ。


 もともと炎であるから、そういう変形することは得意分野のようで、形を変えない拡大、縮小はもちろんのこと、翼や腕を増やしたり、逆に無くして龍や蛇みたいになることもできるようだ。


 この子優秀すぎないか? 早く名前を考えてあげないとな。


 そして、二つ目が帰還させることができないってことだ。ハーゲンたち従魔は、システムの上で服従をしているから、出し入れが簡単に行える。


 しかし、このドラゴンはそうではない。ただ、俺に懐いて従ってくれているだけだ。だから、そんな便利な機能が付いてないのだ。だからどうにかして持ち運べるようにしてあげないといけない。


 そして、最後の発見だが、どうやらドラゴンの攻撃対象が俺から、俺への脅威、に変更されてしまったようだ。


 恐らく直属護衛に任命した時に変わったんだろう。それで、一度守ると消えてしまうかと思ったが、俺への脅威っていうのも可能性の上では永遠になくならないものだから、結果として今も俺を守ってくれている。


 ただ、その守り方がかなりヤバくて、敵が俺に攻撃しようとすると、自動的にドラゴンが出現して炎を吐いて守ってくれるのだ。


 側から見たらただのオート防御にしか見えないことだろう。確かに爆炎の魔王となったからこれはいいことかもしれないが、少しやり過ぎじゃ無いか?


 それにダメージを食らっても再生の焔があるんだろ? うん、我ながら自分をどうやって倒せばいいのか皆目見当もつかない。


 ま、まあドラゴン君も張り切っているようだし、とりあえずこのまま様子を見ていこうと思う。


 そんなこんなで、ドラゴンの試運転が終了した。


 ❇︎


 城に戻って玉座に座り、ドラゴンをあやしていると、突如、天の声さんの声が聞こえた。


「召喚を要請されています。召喚しますか?」


 ……はい?

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