第719話 燐炎


「条件を満たしました。スキル【燐火】が【燐炎】に進化します」


【燐炎】‥怪しい炎を使って生き物を生み出し、それらを使って攻撃する。この炎は水で消えることはなく、対象を喰らい尽くすか、使用者の魔力がなくなるまで燃え続ける。このスキルはこのスキルで倒した敵の数に応じて進化する。


 あれ、こんなに簡単に進化していいのか? それに、何段階も進化してたよな。閻魔様が使ってた燐火をもう越えちゃったし。うん、これはもう閻魔様の前で使うのはやめておこう。


 それにしても、攻めてきたプレイヤー達はそんなに強くなかったな。しゃしゃり出てきたあのプレイヤーが俺をイラつかせてしまったのが最大の理由な気もしなくはないが、それでも一撃で全滅するってどういうことだよ。


 もしかして、数を集めることに必死になって質を全く考慮してなかったのだろうか? まあ、どうでもいいか。それよりも鬼火がこんなにも早く進化してしまったことの方が問題だ。


 鬼火を強化する為に、いろんな場所へ外出しようと思っていたのだが、それも必要なくなってしまった。


 スキルの説明文を見るに、まだ進化は続きそうだが、これ以上進化をして閻魔様に差をつけるのもなんか嫌というか、申し訳ないからなー。


 急に手持ち無沙汰になってしまった。これから何をしようか。とりあえずの方向性は自分を強化したい、というものだからな。何か死ねるようなことがあればいいんだが……


「ん?」


 そういえば、この燐炎っていうスキル、対象を喰らい尽くすか、使用者の魔力が切れるまで燃え続けるって書いてあるが、これを俺に撃ったらどうなるのだろう?


 俺に炎は効かないし、魔力も無限にある。つまり、炎は無限の魔力によって俺を襲い続けるのに、俺は死なない、となると、どうなるのだろうか? これはもう試してみるしかない。


 このスキルがどんな形で発動されるのかも気になるしな。


「【燐炎】」


 対象は俺で、生き物は……格好良く竜でいこう!


 俺がそう心の中で決定すると、突き出した手のひらから怪しい、青い炎が出てきた。そしてその炎はみるみるうちに竜の姿を形作り……


「グォおおおおおお!!!」


 俺に向かって咆哮を轟かせた。完全に炎でできており、実体はなさそうだ。全身が炎であるから防御や反撃も困難になるし、これって結構強いスキルなんじゃないか?


 炎のドラゴンが俺に向かって火を吹いた。その炎は灼熱の炎かと思いきや、意外と体がじんわりする程度の暖かさで、とても気持ちが良かった。あれ、これは元々のスキルの仕様なのかそれとも俺の無効化スキルとかによる影響なのか?


 その後も、青い炎のドラゴンによる攻撃は続いた。


 ❇︎


「クゥーン」


 あの後どのくらいの時間が経ったのだろうか。俺は結局の所死なず、魔力がきれることもなかった為、残ったのは燐炎によって生み出されたドラゴンだけだった。


 うん、どうしようか。これってもしかして終わらないやつなのかな? 最初はとても覇気があったドラゴンも今では哀愁すら漂い始めて、もう攻撃すらしなくなっている。


 最悪、貫通を使えば俺が死ねるかもしれないが、そんなことよりも俺はもっと悪魔的な考えを閃いてしまった。


 そう、このドラゴンを俺のペットにするのだ。


 

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