第714話 身に覚えのない奴と意外と優しい奴
「あ、そうだ。これを持っていけ魔王」
そう言って俺は閻魔様からあるものをポイっと投げ渡された。確認するとそれは鬼の顔をした、手のひら大の何かだった。
「それは所謂、通信機って奴だな。それがあればお前さんが人間界にいても話せるだろうよ。だから肌身離さずに持っておけよ?」
逆に言うと、これがなければ俺が人間界から閻魔様に何か働きかけることは無理ってことだろうか? 同じ仕組みを採用すればいけるかもだが、流石に獄界秘伝の技術なんだろうな。分かるはずもない。
だからコレを渡してきたんだろうな。とりあえずありがたく受け取っておく。閻魔様にはこれからも沢山お世話になるつもりだからな。
「ありがとう、非常に助かる」
どうせなら俺も友誼の証に何か渡したいところだが、俺は生憎必要のないものは持たないタイプで、何かあげられる物がないのだ。
「ん?」
と、そんなことを思いながらアイテムボックスを巡回していると、身に覚えのないものが出てきた。
「なんだこれ、アクセサリーか?」
そう、そこには見覚えのないアクセサリーがあったのだ。効果は、死に対する親和性が高まるって書いてあるな。コレは渡してもいいものなのだろうか?
「ん、どうした魔王?」
「いや、俺も何かお返しにと思ったのだが、いいものが見つからなくてな。でも、その代わりと言っちゃおかしいが、変なものが見つかったんだ」
「変なものだと? ちょっくら見せてみろよ」
「あぁ、これなんだが……」
そう言って、俺はボックスから取り出して閻魔様に見せた。
「な、なっ!? そ、それはお前、死神のペンダントじゃねーか!!」
え? 死神のペンダント? 不味い、全く心当たりがないぞ? 一体どう言うことだ、なんで俺がそんな大層なものを持ってんだ?
「なんだ、その顔はお前死神のペンダントについて知らねーのか? 有名な話だぞ? 冥府を死神が治めてることは知ってんだろ? その死神の力の一端とされるのがそのペンダントなんだぞ? それをお前がなぜ持ってるのかも知りたいし、それを何故身に付けずに放置していたんだ……?」
え、ちょっと待って、冥府を死神が治めてる? そこからもう既について行けてないんですけど? そしてその死神さんの力の一端がこのペンダントだって? 俄には信じられないんですけど。
「ちょっといいか? そもそも冥府についてもよく知らないんだ。ここ獄界と冥府っていうのは違うものなのか?」
「はぁ? お前、何も知らねーんだな。どうやってここにきたんだよ全く……」
い、いやヴァール君が連れてきてくれました。なんて絶対に口には出さない。
「そもそも、ここ地獄っていうのは死んだ奴が来る場所だ。そして、冥府ってのは、大雑把にいうと死後の世界そのものでもある。だからよ、この獄界も冥府に含まれるっちゃ含まれるのさ。そして、その冥府には他にも天界や霊界、そして少し毛色は違うが来世ってのもあるな。それで、この冥府のトップにいるのが、そのペンダントの所有者である死神ってわけだ」
へ、へぇー、そうなんだ〜。し、知らなかったなー。ってことは俺がこのペンダント持ってるのマズくないか? ってか、なんでそもそもこんなヤバい奴持ってるんだよ!
「因みに、冥府の入り口にはケルベロスっていう三首の犬がいてよ、死んでもない奴が入ってくるのを防いでるらしい。ま、そのケルベロスと戦ったやつは基本みんな死ぬんだけどな! ガハハハ!」
あ、そいつは知ってる、というか倒した覚えがある。あれ、俺もしかして知らぬ間に死神に喧嘩売ってたりする?
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