第713話 閻魔との決着


「俺の、望み、、ですか?」


「あぁ、そうだと言っている。ん、なんだ? 俺から欲しいものはねぇ、ってか?」


「いえいえいえいえ! とんでも無いですよ!」


 でも、実際問題何を貰えばいいのか、ってことに関しては少し難しい部分はあるんだよな。


 何がもらえるかは分からないのに、なんでも少し叶えてあげるなんて言われて、マウントを取られてしまってる。戦いで白黒ハッキリすればよかったのに、それも謎の復活でお茶を濁されている。


 この閻魔様は意外にも頭も回るようだ。俺を強敵と分かるや否や上手く付き合っていこうという意思が見える。強かだ。こうでもしないと閻魔というポジションにはつけないのだろうか? まあ、閻魔である時点で強さは保証されているんだろうけどさ。


「そうだ。なら、俺と友達になってくださいよ。対等な関係でお互いに困った時は助け合う。どうでしょう? 戦いも引き分けに終わったことですし、悪い話ではないと思いますよ?」


 相手がそう来るなら俺も言葉の空中戦に持っていく。


 戦いはあくまでも引き分けである、という既成事実を作り、なおかつこちらは倒すこともできたんだぞ? という真意を暗に伝える。


 さらに、欲しいものを対等な関係、ということで向こうにも利があることを説明し、それでいて相手がこちら側に取ろうとしてきたマウントをぶった斬る。うん、我ながら最善手だろう。


「なっ……!? ふっ、ふふっ、フハハはっ! 我と友達かいいだろう。貴様は頭も少しは回るようだな。ならば、これからもよろしく頼むぞ? 困った時には手を貸してくれるのだろう? 期待しておこう! わーっはっはー!」


 え、いいのこれで、本当にいいの? 正解ルート通れたの? にしてもこの閻魔様はなんで笑ってるの? 豪快に笑いすぎだろ!


 なんだか、こっちの意図も見透かされてる気がするしー、うーん手ごたえはないな。


 ブォッ


 周りと戦いの場を区切っていた炎の仕切りが解除された。すると、いの一番に駆け寄ってきた者がいた。


「閻魔様、お無事ですか!? 閻魔様がこのような下等生物に負けるはずがありませんが、些か戦闘時間が長く感じましたので……」


 それは、綺麗な、綺麗な……? 鬼だった。額から角が生え、着物を召した鬼だった。強そうなオーラが漂ってるけど、この人が獄界ナンバーツーなのか?


「あぁ、大丈夫だ心配するな。ただ、俺はコイツに負けてしまったぞ?」


「えぇっ!? 負けてしまわれたんですか!?」


「あぁ、なかなかの強かったぞ? コイツは人間の世界で魔王をやっているそうだ。なぁ、そうだろヴァール?」


 ん、ヴァールと俺のことを知ってたのか? なんか、色々と見透かされるのは気分は良くないな。まあ、こっちも勝手に人様の配下に手を出したみたいなもんだからおあいこか。


「あらあら、流石は閻魔様、全てはお見通しという訳でしたか。しかし、まさか一度とはいえ閻魔様が負けてしまわれるとは、魔王も恐ろしい者ですねー。ですが、閻魔様も決して本気で行われた訳では無いのですよね?」


「フハハっ、よくいうぜ。もちろん本気なんて出してないぞ? そんなことしたら獄界に住んでる奴らが皆死んじまうからな。だが、この魔王も本気を出していないと思うぜ? 今もお前らを目の前にケロッとしてるだろ?」


「い、いや、そんなことは……それに、閻魔様とは引き分けです! 決して勝った訳では無いですからね!?」


 四天王がいる手前、あまり大きな態度を取りすぎるのも良く無いだろう。ここは日本人の固有スキル、穏便、を発動してなんとか乗り切る。


 それにしても、急に話を振ってきたと思ったら、油断も隙もないなこの閻魔様は。それに向こうも本気を出していないとなれば、本当の勝負はお預けのようだな。

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