第712話 青い炎


 閻魔大王が指を鳴らすと、まるでコロシアムを作るかの如く炎が現れ、フィールドを形成しその中には俺と閻魔様の二人だけになった。


 コロシアムの中で殺し合うってか……よし、集中だ。まずは手始めにここでゲットした、閻魔様の技を使ってやろう。


「【鬼火】!」


 魔力はほどほどに、一つの大きな火球にして閻魔様に飛ばした。自分自身の技だから効くとは思っていないが、どんな反応をするのか気になったのだ。まあ、これでダメージを受けてくれれば嬉しいんだが……


 ドーン!


 閻魔様と火球が衝突し、大きな土煙が舞い上がった。そして、その中から出てきたのは、不敵な笑みを浮かべた大王だった。


「ほう、俺様の力が使えるというのは本当のようだな。だが、それを俺自身に使うなんて笑わせるなよ? 効くわけがないだろう。そして、鬼火なんてのはあくまで劣化版、真の炎はもっと青い、くらえ【燐火】」


 鬼火が紫だとするとこの炎は、青いや青紫と言った方がいいだろう。完全な青ではないが、紫に青色を足した感じの色だ。


 そしてもちろん、威力も段違いのようだ。まだ食らっていないのだが、迫り来る火球をみるだけでもそん高密度が窺える。これが鬼火の進化先というわけか。確かに、コレを常用しているならば、鬼火なんて子供のままごとのようだろう。


 ん、ってことは、閻魔様は結構な量の命を燃やしたのかー、俺も帰ったら沢山倒さないとなー。でも、その前に。


 ッダーーーン!


 俺に燐火が激突し、先ほどとは比べ物にならないほどの煙が舞い上がった。流石は閻魔様。でも、帰る前にしっかりと閻魔様と仲良くなっておかないとな。


「なにっ! 俺様の燐火を食らって立ってるだと? フハハハハは! 面白い、面白い!! いいだろう久々に本気を出してやるっ!」


 そう言って、閻魔様は全身からオーラを放ち、俺に飛びかかってきた。


「【龍宿】、【爆虐魔法】、【筋骨隆々】」


 まずは人の体のままで、龍の力をこの身に宿す。そして、少し起爆が遅い爆弾を足元に設置、威力はそこそこに爆発力をマックスで。そして筋骨隆々で全身の筋肉を肥大化させる。


 この一撃で決めてやる。


 全身の筋肉を使い地面を蹴って、閻魔に向かって飛びかかる。そしてその刹那、仕込んでおいた爆弾が作動し爆風が俺の背中を押す。普通の目じゃ絶対に追いきれない速さに到達した俺は最後のスキルを発動する。


「【断罪絶刀】」


 ジャキンッ


 俺は一刀の元に閻魔大王を斬り伏せた。


 うん、思いの外上手くいってよかったな。初めてやることだったから失敗するかと思った。でも実は、爆風が思いの外強くて、制御するためにちっこい羽を出してたのはここだけの話だ。



 閻魔大王の首が飛び、その場が静寂に包まれた。



 さっきまでいた、そして今もいるであろう四天王たちの声は疎か、息のする音も聞こえない。完全なる静寂だ。そして、その状況下で一番初めに音を出したのが、、、だった。


 ネチャリ、首のないからだが何故か動き、新しい顔よ、とでも言わんばかりにもとあった場所に首を据え置いた。そして数瞬後、閻魔大王が息を吹き返した。


「フハハハハは! 我の首を切り落とす人間がいるとはなー! コレは驚いた! 我ももう何百年も首なんて肩の上に乗っけておったから、戻し方を忘れるところだったぞ!」


 ……は? ちょっと待って理解が追いつかない。ツッコミどころが多すぎる。色々と整理させてくれ。


「我を一度でも倒した褒美だ。貴様の望みを聞いてやる。何が欲しい?」


 んんん? え、状況が全く理解できていないのは俺だけか? 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る