第694話 ハンプティダンプティ


 扉を開けると、そこには……


〈lv.150 スティングィパンプキン〉


 そこには、大きな大きなカボチャがいた。頭には王冠を添えており、手足もないため、ぱっと見の印象はキングスライムと一緒だ。


 ただ、なんだろう、その身から? 顔から? 溢れ出てくる形容し難い下衆な感じと成金感が、コイツをキングスライムとは似て非なるものであることを教えてくれる。


 守銭奴、いや守宝奴という言葉がぴったりな気がする。カボチャの後ろには無茶苦茶でかいカボチャと同じくらいの財宝があるのだ。


 冒険者相手にはほぼ無いのと同じくらいの金とミミックで誤魔化し、自分はこれほどまでのお宝を拵えているとはな。どれだけお金を貯めたところで、死んでしまえば天国には持っていけないのにな。


 あ、こいつは地獄にいくか。うん、地獄に堕とそう。


「【人魔一体】、いくぞハーゲン!」


 とっととケリをつけさせてもらう。こんなデブに時間かけてられないからな。俺のサンドバッグくらいにはなってくれよ?


 ッドゴーーーーン!


 久しぶりに全力で何かを殴った気がする。ハーゲンの翼を使った全力助走から、その勢いと俺の全体重を乗せたパンチ、いかにスキルを発動していないとしても、こんなものを食らえば一溜まりもな


「い……?」


 俺は奴と目が合った。そしてそのデブはこちらを見てニヤリと気色の悪い笑みを浮かべた。


 殺す、確実に殺す。こいつは地獄の底の底、まで叩き落としてやる。


 俺は構える。


「【不動之刀】、【雨叢雲剣】」


 この二つの俺の中での最強剣コンボ、どちらも意味わからないほど強いが、それらが組み合わせてるんだ、強く無いわけがない。


 そして俺は更に、待つ。不動之刀は俺の静寂と共にその切れ味を増す。己自身を研ぎ澄ませ、相手に致死の一撃をお見舞いする。もういいだろう、ここだっ!


「はぁあああああっ!!」


 ンッ


 至高の斬撃は、音すらも置いていく。これはもらった。


 ッドーーーーン!


 俺は上から押しつぶされた。何者の仕業なのかは瞬時に理解できただ、理解できたからこそ、意味がわからなかった。


 なぜ、なぜコイツは死んでいないのだ?


 再びソイツと目が合うと、先程の四倍以上気色悪い顔で、ニヤリと口元を歪ませた。


 はい、殺します。


「……」


 とは言っても確実に何かあるってことだよな? 俺の拳だけでなく剣をも受け止められたんだから。確実に何かを条件にして俺の攻撃を無効化、もしくは回復をしているはずだ。


 ただ回復となると、俺の攻撃自体食らっていることになる。ってことは押し切ろうと思えば押し切れるはずだ。だが、それでもダメだったってことは無効化している可能性が高い。


 問題はその条件、か……


 俺が頭を悩ませる中、薄暗いダンジョンはお宝だけが光を放っていた。

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