第687話 プランB(結局いつもの)


「ま、負けた……」


 く、クソ、俺の全財産がぁああ!!


 叡智啓蒙や、ぼったくりはもちろんのこと、ありとあらゆるスキルを使ってみたのだが、全部効かなかった。最終的には服従まで使って最強のイカサマを、と考えていたのが全てパーになってしまった。


 あ、あのつるっぱげのジジイの野郎が俺の金を全部持っていきやがって……! あの不敵な笑みを思い浮かべると今にでも顔パンしたくなるのだが、負けた時に台パンしただけで黒人のサングラスかけたスーツの屈強な男性に取り押さえられてしまった。


 うん、俺にはギャンブルは向いていということがよく分かった。いや、なんか最初の数回で分かってたよ、そんなこと。なんかスキルも上手く働かねーし、運はことごとく無いしでもう散々だった。


 それでもあのジジイに一矢報いてやろうと思ったのだが、結果はこの様だ無一文になって、外に放り出されてしまうという最悪な結果だ。


 もういい、俺は堅実な稼ぎにしか手を出さねぇ。おそらく天の神様、いや天の運営さんが俺にそうしろと言ってるんだろうな。


 最近は依頼はおろか、暗殺ギルドにすら出向いてないからな。ギルドの一員としてたまには仕事をしてやらないとな、うん。仕事をして社会の役に立たないといけないもんな、うん。


「…………」


 はぁ、頑張るか。そうそう上手くはいかないよな。コツコツって大事なんだな。今度からは魔王城の王座の下にでも金庫を作ってヘソクリをするようにしよう。そうすれば咄嗟の出費にも対応できるだろう。


 魔王がヘソクリって……


 ❇︎


 あまりウダウダしていても仕方がないので、俺は早速、暗殺ギルドに出向いた。久しぶりすぎるのだが、現実のスーパーみたいに店の内装や配置が変わってはいないようだ。


 お、いい依頼を見つけた。とは言っても報酬はそこまで良くはないのだが、とりあえず初っ端の依頼リハビリにはちょうどいいかもしれない。


 ビーホークの巣の解体、これが今回受けようと思う依頼だ。


 蜂と鷹の両方の性質を持ち、空をその圧倒的な数で持って支配すると言われるモンスター、らしい。


 巣には蜂の性質を受け継いで、女王やその他の精鋭も多く潜んでいるらしい。また、巣だけを解体してもまたどこかで巣を生み出されるため、できるだけ多くの敵を倒して欲しい、ということだ。


 倒せば倒すほど追加報酬がある、俺はこの一点でこれにしたと言っても過言ではない。こちらには精鋭も揃っている。皆でかかれば蜂だか鷹だかよく分からない奴なんて恐るるに足りないだろう。


「これをお願いします」


「かしこまりました。って、え? これをお一人で行かれるのですか?」


「はい。あ、一応従魔がいますのでご安心を」


「は、はぁ……で、では、ご武運をお祈り申し上げます。お気をつけて」


 何だか煮え切らない反応だな。相手は言ってもビーホークだぞ? 名前からしてそんなに強そうじゃないだろ。こっちには色々いるんだぞ? 大船に乗ったつもりでいて欲しいもんだ。


『よし、お前ら、行くぞ!』

 

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