第684話 常識とヒーロー
「【
目の前で先輩が一瞬にしてポリゴン化させられてしまった。え、この人強すぎない? 実力を隠しているとは思ってたけど、こんなに強かったの? マジで?
「だ、大丈夫か? この人に襲われていたんだろう?」
え、心配してくれてる? あ、そっかさっきまでは僕は弱いプレイヤーだったからか。でも。どうしようこれ、僕も騙していたとバレると先輩と同じ運命を辿ることになる。それだけは避けたい。
「アッ、ハイ、ダイジョウブデス」
「それは良かった。それとこれで分かったと思うが、俺は力を隠していました。騙してごめんなさい。では、さようなら」
「あ、ちょまっ!」
行っちゃった。
「……」
どうしよう、先輩はポリゴンになっちゃってるし、騙してたのってどちらかというと僕だし、どどどどうしよう?
あ、でもこれって蘇生アイテム使った方がいいのかな? でも、もうこの初心者狩りにもうんざりしてきたところだし、そろそろ足を洗おうかな……
よし、ここは見捨てよう。そして僕も新たな生活を始めるんだ!
何であの人が初心者を装ってたのかは、知らないけど、これはあの人が僕にも自由な生活をと言っているんだろう。ここで一歩を踏み出さなければ漢が廃れる!
❇︎
僕は期待と不安が入り混じ理ながらも森を抜けていく、もう少しで始まりの街に着きそう、というところで聞こえるはずのない声が聞こえた。
「おい」
「え?」
恐る恐る声のした方向を振り返ると、そこには、死んだはずの先輩がいた。おかしい、僕はこの目で見たはずだ、先輩がポリゴンになる瞬間を。
「な、何でっ……!?」
「何でってそりゃ、そりゃここはリスポン地点からちけーからな。それより、何でさっき蘇生アイテムを使わなかったんだ? 確かお前に一個は持たせてたよな?」
「い、いや前使ったから……」
「うっせぇ! そんな見えすいた嘘はいいんだよ! ちょっと痛い目見せねーとわかんねーようだな! 死ねぇ!」
「いや、お前が死ね」
ドサッ
「いやーごめんごめんちゃんと送ってあげれば良かったですね。ここがリスポーン地点から近いこと忘れてました。カッチャさんもこいつとはもう縁を切った方がいいのでは? よければ次の町まで送りますよ?」
「アッ、ハイ、オネガイシマス」
❇︎
そんなこんなで僕の窮地を救ってくれたレッドさんは、次の街にまで送ってくれるという何とも紳士的すぎてカッコ良すぎる行動をとってくれて、挙げ句の果てにはお礼の一つも言わせないでどこかへ去っていった。
「なんだ、ただのヒーローかよ」
あの人は僕をシャバの世界に戻してくれた。
……色々っツッコミどころあるけど、この森がリスポン地点から近いってことそんなに有名なの? 僕が知らないだけ?
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