第680話 初めての初心者


 これで、ちゃんと誤魔化せられているのだろうか? でも相手も初心者ならいける、よな?


「あ、」


 また、スライムが出現した。これは俺が倒してしまってはまたクリティカルがでることになるし、最悪怪しまれてしまうかもしれない。


 ここは、一つ俺が倒さなくても良いようにしなくては。


「折角ですから、スライムを倒してみては? もし難しそうでしたら私も助太刀いたしますから!」


「うぅっ……そ、そ、そうですよね。折角なら倒した方がいいですもんね……」


 そういって彼? 彼女? は自分の武器である斧を握りしめた。


「う、うぁあああああ!!」


 彼は急にスライムに向かって走り始め、力の全てを使ってスライムに斧を振り下ろした。


 ビチャァッ


 予想以上の威力が叩き出されたことによって、俺の時よりかはまだマシだが、それでも悲惨な姿になってしまったスライムの亡き後がそこには残っていた。


「あ、あれー? 意外と倒せちゃいましたね!」


 どうやら本人は倒せる自信がなかったようだ。それにしては思い切りが良いように思えたが、まあ、これが才能なのだろう。


 それか、俺と同じようにクリティカルが出たのか。


  だが、ちゃんと倒せるのならば後は全部任せられるな。俺が下手に手を出してバレるよりかは、ちゃんと倒してもらって経験値を受け取ってもらった方がいいだろう。


 ❇︎


 その後も順調にスライムやゴブリン、コボルトなどを倒していきながらどんどん奥へと進んでいった。


 基本的にうぎゃー! とかぴぎゃー! とかほえー! とかいいながらなんだかんだ倒してくれるので、俺は楽できるし良い感じだ。


 今思えば、こういう本来必ず最初に通る道というのを、俺はもろもろすっ飛ばしてきたんだな、ってことが分かる。


 だからこうして初心者のように振る舞って体験してみるのも案外悪くはないな。


 この同伴者さんも、そこまでの初心者というわけではなく、立ち回りとかからすると、意外と知識はあるようだ。


 それなのにここまでおどおどしてるのは単に戦闘経験が少ないのだろうか? それともモンスターが嫌いなだけとか?


 まあ、無駄に詮索はしたくないし、そのままにしておこう。そんなことより、コイツらクソ弱いな。


 俺が死霊魔術で召喚するスケルトンよりも弱いんじゃないか? そのくらいのレベルだ。まあ、始まりの森だからな。強かったら逆におかしいか。


 そんなこんなで森を進んでいるととうとう奴と遭遇した。


 そう、ホーンラビットだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る