第675話 役目と任務


「私にできること、ですか……」


 そう、確かに俺ら魔王軍と人間、プレイヤーとの橋渡しになる。というのはこちら側にとっても大きなメリットがありそうな話だ。


 しかし、具体的に何をどうするのか、という話については、俺が知り得ない情報をくれる、ということくらいだった。


 でも、魔王が人間を使ってすることがそんなみみっちいことだけな訳ないよなー?


「それこそ、先ほど申し上げた未知の情報の提供、ですかね」


「違う。もちろんそれもだが、それ以外に何ができるか、ということだ。常に貴様が我の知らぬ鮮度の高い情報を仕入れられるとも限らんのだろう?」


「っ……! そ、そうですね。で、では他に私にできること、ですか……」


 この少年は俺が軽く睨んだだけでもすぐにビクッと反応してしまうな。別に悪いことではないのだが、今回、魔王軍に加入するのだ、少しくらい力を兼ね備えておいても損はないだろう。


 それに、強者しか知りえぬ情報、というものも必ず存在するだろうからな。


 まあ、それはおいおいだな。一朝一夕に強くなれるわけでもないからなー。


「もう良い、では我が直々に任命してやろう。貴様の役目、任務は一つ、人間界の情報収集。これはこの世界が人間の手によってどのくらい攻略されているか、や、どの場所でなにがとれる、などといった普遍的な情報から、我々の脅威となりうる強者の情報も仕入れてもらう。これが具体的、ということだ。分かったか?」


「はっ、なるほど! ご指導ご鞭撻、感謝いたします!」


「礼など良い。それより、我は一つ、と言った。つまりまだ続きがあるということだ。それが何かわかるか?」


「まだ、他にも仕事が……?」


「ふむ、これは頭に無かったかもしれぬが、貴様のもう一つの仕事は、誤情報の流布、だ」


「誤情報の流布?」


「そうだ。貴様がいくら頑張って情報を仕入れようとも、その鮮度はすぐに落ちる。また、その情報が誤っている可能性もあるし、そもそも核心的な情報を手に入れられないかもしれない。そうなった時に役立つのが誤情報だ」


「なるほど! 常にプレイっ……人間たちの動向を受け身になって監視するのではなく、こちら側からも偽の情報を流すことで仕掛けていける、というわけですね!」


「そうだ」


 お、意外と賢いんだな。ゼロから一を生み出すのは苦手かもしれないが、一から十は得意そうだな。ならば、十ではなく百を目指して頑張って欲しいな。


「これから貴様には基本的に人間界で生活してもらう。やりとりはこちらから使者を送る。我との繋がりを決して悟られるではないぞ?」


「はい! もちろんでございます!」


 このやる気が空回りしなければいいのだが……

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