第673話 プレゼン
「ほぅ? 我が魔王軍に加わりたいと?」
「はい、その次第でございます」
「では、逆に問おう。見たところどうやら貴様は弱いようだ、秘めたる力も特には感じられん。そのような人間ごときに何ができる? 力なき者が魔王軍で活躍できるとでも思っているのか?」
「……っ!?」
俺はちょっと語気を強めて、さらに気持ちオーラ? 覇気? みたいなもんを解放して喋ってみた。まあこいつの気持ちを確認する為だな。これくらいのことでへっぴり腰になってしまうようでは論外だ。
「お、お言葉ですが魔王陛下、この魔王軍にすでに力、兵力はすでに十分すぎるほどにあると考えます。それこそ今の人間を根絶やしにすることくらい容易いでしょう。ですが、だからこそ新たな角度での魔王軍の強化、と捉えてみてはいかがでしょう?」
「ほう?」
「はい。人間は力はなくとも物事を考える脳があります。そして、その最大の特徴である異様なほどの成長速度も有しております。その二つがかけ合わさった時に果たして本当に魔王軍は安泰と言えるのでしょうか?」
「むっ」
「もちろん、私が人間の中でもっとも賢いというわけではありません。しかし、その人間の考えていることや情報は人間たちのみで共有されております。そして一般公開されていない情報も存在するのです。そして、私はそういった特殊な情報を扱う情報屋でございます。この私を向かい入れてくれた暁には、今までは魔王様の耳に決して入ってこなかった情報を必ずやお届けいたしましょう」
「あっ!」
情報屋? 情報屋といえば確かにどこかで会ったきがするな。だが、それも長い時間一緒にいたというわけではないだろう? なんでコイツは俺が魔王って分かったんだ?
「ま、魔王様……? いかがなさいましたか?」
あ、やべ声に出てたのか。まあ正直、こいつがきた時点でどうするかは決めてた。俺が直前に考えてたことに最適すぎる人材だからな。
戦力以外の新たな角度からの強化、コイツはそれをなし得る人物だ。ハナから採用以外無かった。
だから、一生懸命プレゼンしている間も適当に返事をしていただけなのだが、情報屋ということを聞いてようやく思い出せた、ような気がする。
よし、なんとなくスッキリしたから話を先に進めるか。目の前の彼も緊張した様子で世界が終わったみたいな面持ちになっているからな。
「ふむ、ではお前を我が軍に入れよう。だが。まだ完全に信用しているわけではない。裏切ったらそれが最後、お前には死よりも恐ろしいものを経験させてやろう」
「ヒッ……!」
全力ではないが、俺はさっきよりもオーラを解放して、そういった。そうこれは信用が一番大事だ。だけど一番難しいところではあるから、ここは力を使わせてもらった。
まあ、兎にも角にもこれからの働きに期待だな。
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