第667話 魔王攻略軍


「お前らー! 準備はいいか?」


「あぁん、誰に指図してんだドラケぇ! んなのあたりメェにきまってんだろ!」


「いや別にアッパーに言ったつもりはないんだが?」


「はいはい、そこまでですよお二人とも。今からいよいよ魔王城攻略を開始するんですから、敵はあの門の先ですよ」


「お前にだけは指図されたくねぇ、ウィズぅ!!」


「はぁ、全く。先が思いやられるなこれは。皆、気を引き締めていくぞ!」


 私はシャーク、双剣使いの者だ。今回の魔王城攻略レイドパーティの総指揮を務める。


 まあ、さっきの様子だと私の指示がどこまで通じるかはわからないのだがな。まあ、どうせ総指揮なんて名ばかりなのだ、あまり重く捉えても仕方あるまい。


 今回のパーティは今までのメンバーに加えて有志のメンバーを募っている。そもそも、私たちだけでも連携に不安は残るのにもかかわらず、少数精鋭にしなかったのには訳がある。


 私たちが知っている魔王は、それこそ少数精鋭の配下を連れてプレイヤー達を蹂躙していたが、先の天魔大戦で、スケルトンの大群を召喚し続けてた。


 その向こうにある数の利を埋める為に、こちらも数を用意したというわけだ。まあ、これもどれほど効くかは分からないが、備えあれば憂いはなしというものだ。


 まあ、そんなもので一切の憂いが絶たれるのであれば楽なのだがな。


「よし、では推して参る!」


「え、シャークそれキャラでやってんの?」


「……」


 アッパーにそう聞かれたのだが、無視して私は魔王城の門を開いた。


 ❇︎


「はぁ、はぁはぁ」


 恐ろしい、恐ろしすぎてもはや無理ゲーと言わざるを得ないほどだ。


 一層から水中戦とか、運営はこの城を攻略させる気はあるのだろうか?


 第一層からそこに一切の甘えが排除され、心身共にダメージを与えてきた。事前情報があったためなんとか対応することができたのだが、これは先が随分とおもいやられる。


 数種のサメたちの連携攻撃をくらい、パーティの半分が瓦解し、生き残った者たちも回復手段を半分ほど失ってしまった。


 今回の攻略で完全クリアができるとは到底思ってはいないが、できるところまでは進み情報を少しでも多く獲得したい。


 さぁ、完全なる未知の世界、第二層。一体どんな強敵が待ち受けているのだろうか。


 ギィーーー


 重い扉を開けるとそこには……



 何も無かった。

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