第666話 悪魔?


「次は、デトックスとゾム!」


 できればゾムは身内の誰とも戦わせたくないのだが、せっかくの機会だからデトには戦ってもらおう、そんな感じの軽いノリだった。


 ❇︎


 と思っていた自分が浅はかだった。


 ゾムのことを舐めすぎていた。いや、ゾムを仲間にしたのは随分前だから忘れていたのだろうか。


 どちらにせよ、今回の戦いは思いもよらない展開になってしまった。


 毒で攻撃しようとしたデトに対して、ゾムがその毒を全て吸収してしまったのだ。


 元々スライムであるから、酸で攻撃など、毒との親和性でいうとそこそこあったのだろうが、そこにデトの高濃度な毒が加わることで、ゾムは毒の体を手に入れた。


 いや、手に入れてしまった。


 自ら毒を生み出すことはできないのだが、触れただけでダメージが入ってしまうのだ。


 これで、もし仮にも敵がゾムに飲み込まれたとして、助かる保証は一切無くなってしまった。


 ただでさえ近接戦闘で敵なしとすら思えるほどの強さなのに、更に強くなってしまってどうるするんだよ。


 せめて遠距離攻撃を身につけて欲しかった。


 ブチャ


 え、あ、自分の身体が毒になったから、それを切り離して投げ飛ばせば遠距離でもいけるって?


 あぁ、そうですか、それは良かったです。とりあえず魔王様は頭がクラクラするので寝させて頂きますね、はい。


「……はぁ!?」


 なんで、あんなに強くなってんだよ! ただの模擬戦だったんだけど? 冷静になればなるほど納得行かないんだが?


 これじゃあ普通に強すぎだろ、もう悪魔なんて余裕で倒せそうだし、むしろゾム本体の方が悪魔的性能と見た目してんぞ?


 あ、因みに模擬戦は毒が効かなくなった時点でデトックスが投了してた。ま、そりゃそーか。一番の武器が効かないのに戦っても無駄だからな。


 うん、まあ自分の戦力アップに喜ぶとしますか。別に嫌なことじゃ決してないからな、うん。


 ゾムがいくら強くても問題ない。


 よし、切り替えて次の模擬戦にいこう。まだまだ先は長いぞ?


 そう思った時だった。


「魔王様、敵軍です! かなりの人数がいるようで第一層を突破されました!!」


 と、よくある感じで、扉をバーン! とあけて、堕天使のイエナイがそう言ってきた。


「ふっ」


 バッチリ言えてるじゃないか。と思って、笑ってしまった。悔しい。ここは魔王の威厳を保つとこだ。笑ってる場合じゃない。ってか、かなり不味い状況じゃないか?


 まず、ゾムを第二層に転送する。第一層うんぬんはその後だ。


『確実に処理して第三層に上がらせるなよ? 大丈夫、お前なら確実にやれる。魔王様のお墨付きだ。任せたぞ!』


 そう言ってゾムを送り出した。


 よし、じゃあ反省会をしようか、第一層のみんな?

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