第664話 全方位対応


 骨対骨、それは魔王軍の古参を張っているスカルボーンとアシュラとの対決である。


 今となっては骨では無くなったものの、その生まれからずっと骨ズ、などと俺から呼ばれている。


 スカルとボーンは「技」、アシュラは「力」と俺の中では区分されている。技と力の頂上決戦にして、同郷の者同士の戦いでもある。


 訓練として、戦ったこともあるだろう二人だが、さて、一体どんな戦いを見せてくれるのだろうか。


「はじめっ!」


 先に動き出したのは、スカルボーンだった。スカルとボーンに分かれ、二方向からの攻撃を展開しようとしている。


 それに対してアシュラは、泰然とした様で二人を同時に相手取ろうとした。腕が三対あるアシュラにとっては、二方向からの攻撃など、造作もないのだろう。


 ただし、それはあくまでただの挟み撃ちの話であって、スカルとボーンの挟撃は訳が違う。


 二人の攻撃は脳に負荷を与えるのだ。


 これは実際に体験したから言えるのだが、二人の圧倒的な選択肢の多さに処理が追いつかなくなるのだ。


 俺は分割思考があるからいいのだが、アシュラは素材こそ十個分の頭はあったのだろうが、今となっては恐らく一つの脳である。


 そして、その一つの脳には、スカルとボーンの攻撃は重すぎる。大多数に効果抜群なのがアシュラとするならば、対個人に絶大な効果を発揮するのがこの二人なのだ。


 二人の転双に翻弄され徐々に徐々にダメージを重ねていくアシュラ。いかにVITが高くHPが高いといっても、少しでもダメージをくらい続けていれば、いつかは力尽きる。


 ここがアシュラの正念場だな。


 パキッ、バキバキバキバキ!


 アシュラがどう対応するのか、それを楽しみにしていると、アシュラからもの凄い大きな音が鳴った。


 なんと、アシュラが変形していたのだった。


 アシュラは本来、本物の阿修羅観音像のように、前に一つ、両サイドに一つずつ顔がついていた。


 しかし、今はその両サイドの顔が更に開き、後ろの方を向いたのだ。これによって全方位に対応できるようになったということだろう。


 また、その顔が後ろに向いたことに伴って腕もそれに付随し、完全に死角が無くなった。三つの顔がそれぞれ目の前の敵に集中するっていう感じか?


 だが、三つの視界、六つの腕を扱うにはまず間違いなく分割思考が必要になると思うのだが、もしかして、戦いの中で獲得したとでもいうのか?


 まあ、もともと分かれていたのを統合したんだから、それをまた分けるのはそんなに難しいことでもないのか?


 まあ、どちらにせよこれで分からなくなったな。スカルとボーンもまだまだ、隠し球や、奥の手を残しているだろうからな。


 それにしてもアシュラ、三百六十度の視界を手に入れられたのはいいことだろうが、逆に普段はどこを正面、メインにしていくのだろうか?

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