第663話 神児


 アスカトルとアイスの戦いが終わってすぐさま俺は回復スキルを使った。瀕死の状態で本当に死なれたらまずいからな。


 それで二人とも状態が落ち着いてから、まずは問題児であるアイスの方に向かうことにした。


『アイスー、お疲れ様ー』


『うぅ、あ、ごちゅじんちゃま! あいすどうだった? かっこよかったー?』


 くっ……こんな真っ直ぐな目と純粋な心でこられたら、すっかり毒気を抜かれてしまうな。はなから怒るつもりなどはなかったが、やんわり注意しようくらいには思っていたのだが。


 これではそれすらもできない、いやしたくないな。今回は皆、大丈夫だったのだし、うん、大丈夫だろう!


 子供を溺愛している親はこんな感じなのだろうか? 子供の為を思うと叱るべきところは叱らねばいけないのだろうが、自分の為に甘やかしているのだろうな。自分がその立場に立ってよく分かった。


『あ、そうだアイス、最初アスカトルに毒で攻撃されてただろ? あの時は毒で苦しそうにしてたのに、なんで途中で立ち上がれたんだ?』


『んー、あいすもよくわかなんないけど、からだのなかにわるいこさんがいたからそれをどっかにやろうとえいってこおらせたら、いなくなったの!」


「……」


 え、まじ? 赤ちゃん言葉で言ってるから伝わりづらいが、それって体内の毒を凍らせて体外に放出したってことか? それ、無茶苦茶すごいことじゃね?


 でも、それならアイスが途中で立ち上がれたのも、その時に体がボロボロになっていたのも納得できる。毒を凍らせる過程で、すでに侵された細胞たちも凍らせざるを得なかったのだろう。


『アイス、お前凄いなー! 最後の魔法もそうだけど、まさか自力で毒に対する対抗手段を見つけてしまうなんてな! 凄いぞー!』


 そう言って俺はアイスを全力で、ウリウリナデナデしてあげた。


 そうなんだよ、本来はアイスの最後の魔法、ニヴルヘイムを褒めてあげようと思っていたのに、それよりも個人的には凄いと思えることをしてただなんて……


 本当にこの子は何者なのだろうか。恐ろしいほどの強さと成長力、にあわせてこの愛嬌、全てを持ち合わせすぎじゃないか?


 ここまで強いと、このアイスを進化させたらどうなるのか、という疑問が頭の中をチラつき出す。だが、もちろんアイスはこの可愛さがあってのアイスだ。もちろん進化はさせたくない。


 まあ、今は全然今のアイスで問題ないし、むしろ火力超過くらいなとこあるし、このまま順当に強くなってもらいましょう。


 あ、アスカトルは……まあ、いうことは特にないな。普通に戦い方がうまかったしな。ただ、もう少し糸や配下、鎌での攻撃を強化できれば、それだけでずいぶん楽になると思う。


 その三つを警戒させることができれば本命をもっと通りやすくできるだろうからな。それに、常に毒が本命になるわけじゃないだろうから、柔軟な戦い方が強みになるように、他のカードを強くしていってもらいたい。


 よし、じゃあ次は骨骨対決だな。

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