第662話 恐ろしい子
その後もアイスとアスカトルの試合は、アスカトルが糸や配下を使って仕掛け、それをアイスが氷魔法で一掃する、という流れができていた。
アスカトルは隠密も発動しながら、あらゆる角度からアイスを責め立てているものの、氷というものは攻撃にも防御にも転用でき、アスカトルの奇襲すらも防がれる始末となってしまった。
配下、糸、斬撃、もうアスカトルの手札は何も通用しないのでは、と観衆の誰もがそう思った時、突如、アイスが苦しそうに横に倒れた。
青いはずのアイスが顔を赤くして、息もはぁはぁと荒くなっている。これはいったいどういうことなんだ?
そう思い、アスカトルの方を見やると、そこには毒針を手から生やしている、アスカの姿があった。
なるほど、全ての攻撃をアイスの氷に防がれていると思っていたが、言われてみればまだ毒が残っていたな。しかも、毒はその他の攻撃に比べて分かりにくいし、一度体内に入ってしまえば氷での対処は難しい。
アスカトルがどの時点で毒針を指していたのか、それとも毒針すらもブラフで別の手段で毒を盛っていたのかは分からない、が、毒を盛れた時点でアスカトルからしてみれば時間の問題だったようだ。
アイスは単純な戦闘能力は得意だが、こういった盤外戦、というか裏での駆け引きなどはまだまだなようだな。
ってか、それまでアイスができてしまったらいよいよスーパーベイビーすぎるだろ。まだまだ可愛い赤ちゃんで良かった。できればアイスにはこのままでいてもらいたい。
そう、まるで一度も進化することなくレベルをカンストするかのようにな。
「勝者、アスカt、ん?」
そう勝者宣言をしようとした時、アイスが急にむくりと立ち上がった。
体はかなりボロボロのように見えるが、それでもなんとか立ち上がっている。どういうことなのだろうか。確実に毒は回っていたはずなのに、顔の赤らみも、息の荒さもなくなってしまっている。
しかし、体の損傷が急に大きくなっているような気もする。これは、立ち上がったアイスには申し訳ないが、危ないから辞めさせよう、そう思った時だった。
『に、にぶるへいむーー!!』
その時、世界が凍った。
辺り一面が氷に覆われ、生きているもの全てが氷漬けになった。
いや、観客達はペレが炎の結界のようなもので守ってくれているようだ。しかし、その炎ごと凍っているようだった。うん、意味分からない。
この超大規模魔法を撃った張本人は、疲れたのか、それとも限界が来たのか倒れていた。
そして、この魔法をモロに食らったアスカトルも瀕死の状態だった。死んでないだけ流石と言ったところか。
これは、引き分けだな。思いの外、アイスの執念のようなものが見れて嬉しかったが、少しばかりやり過ぎではなかろうか?
これは叱るべきか褒めるべきか悩ましいな。
「【慈愛之雨】」
ってか、ペレに引き続きアイスまで、この場所を酷い有様にしやがって……
これは運営様に頼むしかないな。
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