第661話 成長期
「第三回戦は、アイスとアスカトル!」
この二人の組み合わせは異色中の異色と言えるだろう。今回はあえてそういった組み合わせを選んでいると言うのもあるが、単純にアイスの実力がどの程度のものなのかが気になったのだ。
よちよちと歩く姿からは到底考えることもできない、アイスの強さは果たしてどこまでアスカトルに通用するのだろうか。
「はじめっ!」
これはなんとなく言ってみたかっただけだ。言ったほうがそれっぽいしな。
あと、この前の試合で荒唐無稽な姿になったこの宴会場は、特段何もせずに再利用させてもらっている。
落ち着いてから会場を見渡すと、この荒れている感じも悪くはないなと思ったのだ。また、色々吹き飛ばしてくれたおかげもあって、かなり戦闘スペースが広がり戦いやすそうになっている。
もう、皆戦う気満々で、むしろ宴をする感じでは無かったから、このままいこう、となったのだ。
魔王城の性質上、内装はいくらでも悲惨なことになれるし、改装も可能なのだが、外側はどう頑張っても変えられない、保持される、というのが今回は良い方向に働いてくれたな。運営には感謝、感謝だ。
おっと、そんなことよりもとっくに戦闘は始まってるな。いや、俺が始めたんだったな。
そう思って二人の戦いに目を向けたのだが、未だ動きはなかった。アスカトルは配下をたくさん生成しており、対するアイスは何をするでもなく、ただただぼーっとしているように見受けられた。
動きがあったのは、アスカトルの配下生成が十分に終わった後だった。カトルが一気配下をアイスに向かって、けしかけた。その数なんと百は余裕で超えている、という数だ。
アイス一体に百越えの数、と言うのは、部外者からすればやりすぎだと思うことだろう。しかし、アイスを知っているものからすれば、その数は足りないとすら思えるほどなのだ。
『くればすぷれしゅー』
念話で声が漏れているのがとても可愛い。しかし、その攻撃内容は全く可愛くない。
アスカトルが向かわせた配下の軍団は一匹一匹は小さくても数が多いことで、かなりの面攻撃になっている。それこそアイスの視点からだと、視界一杯に蜘蛛で埋まってしまうほどに。
だが、そんな状況に一切物怖じせずに魔法を放てた、というだけですごいことなのだが、アイスに関してはそれだけでない。
クレバスという、氷河の裂け目を作り出し、配下の軍団を一瞬にして飲み込み、それを閉じることによって完全に倒しきってしまったのだ。
……いや、アイスがこれくらいできることは知っていた。知っていたんだが、その対応スピード、そして技のキレや規模、威力など、どれもが成長しているように感じる。
これはアスカトルにとって厳しい戦いになるかもしれない。
出会った頃は赤ちゃんで、今もなお赤ちゃんのアイスはもしかしたら、とんでもないスピードで成長しているのかもしれない。
え、ウチのアイスって成長期なの?
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