第660話 水と溶岩


 今回の順位極め決定戦はトーナメント方式で、俺がなんとなく気分で戦わせて行く。その場のノリで決まったんだからこれくらい許してくれ。じゃあ第二回戦だな。


「次は、海馬とペレだな!」


 この組み合わせは、なんとなくだな。でも一応少しは考えている。階層が近い順だと海馬とゾムになってしまって、それだと結果が見えているというか、調教にゾムを使ってたのもあってなんか微妙だった。


 対するペレも近いところで言うと、アスカトルだが火が弱点であるから初戦から戦わせるのは違うかな、と言う判断だ。


 そこで、あえて実力が上であろうペレに、効果が抜群な水属性がメインの海馬を当ててやろうということだ。まあ、半分ノリだけどな。


 総当たりでも良かったが、時間がかかって面倒臭いからやめた。プレイヤー達も帰って行ったし、ここからは完全な俺の自己満かつ、身内ノリ全開だ。


 両者互いに向き合っている。急にピリッとした緊張感が漂う。


 人型のペレに対して、九つの首をもった龍の姿をした海馬とでは体格差が凄まじいな。


 最初に動き出したのは、海馬だ。九つの首全てから水属性のブレスを放った。しかも、全て同時ではなく、避けるのを見越しての時間差ブレスだ。


 しかし、それすらも的確にペレは避けて行く。時にはお得意のマグマを生み出して、水とぶつけたりもしている。


 少量のマグマがぶつかるため、少しは水蒸気に変わるものの、その圧倒的な物量差で押し流され、マグマは固まってしまっている。


 そのまま固定砲台と化した海馬は次々とブレスを発射し、ペレが避けれる場所ごと潰していく。逃げる場所が次第になくなっていくペレはそれでもマグマで抵抗していく。


 それでも流石にもう無理か、と思ったその時、ペレが動いた。


 被弾覚悟で海馬の元に向かって走り出したのだ。最初の何発かは避けているが、それでもブレスを食らい始め、体が固まってきてしまう。


 それでもまだまだ前進するペレに対して、海馬は動揺を露にした。ブレスを乱発するが、ペレの致命傷には至らない。


 もう後少しで手が届きそう、遂にペレがそこまで距離を詰めた時、海馬が全首でペレに向かって一斉放射した。


 全方位といっても過言じゃないその高密度の弾幕にペレはここまでか、と思ったその時だった。


 ペレの顔がニヤリ、と歪んだ気がした。


 ッドガーーン!!!!


 大、爆、発が発生した。それこそ会場全体を飲み込むほどの大爆発だ。その場にあった食べ物達も吹き飛び、会場は大惨事そのものとなった。


 おそらく水蒸気爆発だろう。大量の水に対してそれに対抗できる量のマグマを生み出し、衝突させたのか。


 そして、それを一身に受けた海馬も案の定、ボロボロになっていた。


 それに対して、より近い距離にいたであろうペレの方はというと、ほとんど無傷の状態であった。いや、ペレは宿命の指輪を持っているのか、それで死ぬことによって生き返ることができたのか。


 これは、ペレの勝ちだな。自分の特性をしっかり生かした立ち回りで確実に相手を倒し切ったな。海馬もいい感じだったが、水ブレスだけじゃなくて、他のも織り混ぜていればもっと違った結果になっていたのかもしれないな。


 ペレ、恐るべし。


 ってか会場どうしよう、到底続きが行える感じじゃないんだけど。

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