第659話 ウチの従魔


 はぁ、一体どうしてウチの従魔達はこんなにも戦闘狂ばかりなんだ?


 ペット枠のアイスでさえも、急遽開催が決定したこの魔王軍序列決定戦にワクワクしている様子だ。アイスくらいは俺と一緒にゆったり観戦しよーよー。


 まあ、モンスターという生態上、仕方のないことなんだろうな。モンスターが全く戦おうとしないのも、それはそれで変だからな。


 よし、じゃあ早速始めるか! まーずーはー、


「第一回戦、堕天使たちvs人間ども!」


 これはまあ妥当なカードだろう。数もちょうど三対三と揃ってるし、実力的にもそれ程差はないだろう。


 というか、他のメンツに対して両者とも差が開きすぎるからこの組み合わせしかあり得なかった、というべきだろうか。


 まあ、プレイヤー達が特訓と実戦の成果をいかに見せられるかがポイントだろうな。実力では堕天使たちの方が上なのは間違いないだろうから、頑張って欲しいところだ。


 そうは言っても、堕天使ズが勝つだろうなと思っていたのだが……


「お?」


 思いの外人間達が善戦しているようだ。これは先の大戦の影響だろうな。格段に動きが良くなっているのだ。


 それもそのはず、死にそうになったら回復してもらえて、相手は倒しても倒しても湧いてくる。


 そんな状況でずっと戦っていればそりゃ、実戦経験も沢山積まれるだろうし、何よりレベルが上がる。


 モンスターにレベルの概念があるのかは分かりにくいが、確実にこの世界の人間よりもプレイヤーの方が成長は早いだろう。


 つまり、この世界の人間ではありえない経験とあり得ないシステムによって、想定を遥かに上回る力をこの三人は手に入れてしまったということだ。


 スピードが上がったことで、敵の攻撃を避けることができ、その間に反撃を繰り出す。単純なことであるが、それゆえにその影響がモロにでている。これはもしかしたら、もしかするのか?


 ❇︎


 結局、もしかしたら、なんてことは起きなかった。


 いかにプレイヤー達の能力が上がれどそもそもの差を埋めるには至らなかったようで、更には三人の連携の差が著しく出た。


 常に行動を共にしている堕天使たちと、他人同士と思っているプレイヤー達では連携に差が出るのは当たり前だった。


 プレイヤーの内の一人が堕天使の触手に絡め取られ、ダウンしてからは一方的だった。三対三で一人の差は余りにも大きすぎだのだろう。


 最後は、魚人じゃないプレイヤーが毒でやられて、対戦は幕を閉じた。


 彼は最後の最後まで目の奥は死んでいなかった。死んでいなかったのだが、例えそうであったとしても、負けることがあるということを体現してくれた。

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