第656話 あれ、また僕何かやっちゃいました?
そう、俺の隠し球は始まりの街のスキルショップで爺さんに譲って貰った、暗黒魔法だ。
使い勝手が良くて、威力もそこそこあるやつ何かないですかね? って聞いたらこれを無言で差し出してくれた。あ、もちろんお金は払っている。
暗黒魔法なんていかにも天使に刺さりそうだから、爺さんはとても良い働きをしてくれた。グッジョブすぎる。
でも、その攻撃は無惨にも回避されてしまった。だってそうだよな、よくよく考えてみれば、いくら使い勝手が良い魔法、スキルを用意したところでぶっつけ本番で使えるわけがないんだよな、うん。
ちゃんとしっかり試運転をしておくべきだったなー。
俺の視界が無になったのは、そんな碌でもない後悔をしていた、まさにその時だった。
ッダーーン!
視界は白というより、無で、色味が無いといった方がいいだろうか。ともかく急に視界が遮られ、俺はそこで初めて相手の攻撃を感じることができた。
不味い、今、自分が一体どういう状況なのかが全く把握できていない。
超極太の何かで殴られているような感覚でありながら、全く痛くも痒くもないのだ。もちろん吹っ飛んでもいない。
全身を細かい針で刺されているような、はたまた暖かい春の陽射しを浴びているような、そんなチグハグした感覚だ。
俺が不思議な感覚に襲われていると、またしても突然視界が元に戻った。そして復旧した視界に映ったのは、驚愕の顔面を備えた天使、ガブリエルの姿だった。
「う、うそ……ぼ、ボクのブレスが全く効いていない、なんて……有り得ない、そんなことがあって言い訳ない。嘘だ、嘘だ、嘘だぁあああああ」
あ、そういうことか。今、俺はブレスを食らったんだな? でも、俺は海馬の協力によりブレス無効を獲得しているからダメージが入らなかったのか。
そして、そのブレスというのがこのガブリエル君の奥の手、それこそ必殺技みたいなものだったのだろう。それを、なんの抵抗もなしに無傷でいられちゃ、そりゃメンタルにきますわな。
うん、なんかごめん。でも、仕方がないんだ。
よし、なら今が追撃チャンスだな。
「ん、今何かしたか? すまない、急に心地の良い陽射しが俺だけに照り付けてきたようでね。戦中になんとも優雅に日光浴をしてしまっていたようだ。だが安心して欲しい、貴様の相手なぞ日光浴の片手間で十分だからな。はっはっはー!」
これで追撃成功だな、メンタルの。
いやー、やっぱり弱っている時にこそ、攻撃は届くものなんだね。弱っている時に弱っている所に、最適の一撃を打ち込む。これが戦いで必ず勝つための掟なんだろうな。
よし、最後にトドメを刺しますか。
「【暗黒魔法】、ダークマター」
あっ、しんぞ……
俺がその存在を思い出した頃にはすでに、敵のガブリエル君は塵となって消えてしまっていた。……無念。
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