第649話 まだ始まりません


 気がつくと、そこは何もない荒野が広がっていた。風も殆ど吹いておらず、時たま吹く風は逆に寂しさを演出している。


 視界一杯に焦茶の地面が映し出されており、これから天魔大戦が開かれるなんて到底考えられないほどだ。


 しかし、遠くの空にはまだ胡麻粒ほどの大きさでしか見えないが、確実に天使が近づいてきている。どうやら私たち魔王軍の方が先に到着したようだ。


 ここでもう一度戦術をおさらいしておこう。まあ、戦術らしい戦術はないのだが。


「貴様ら人間には勿論、人間の相手をしてもらう。死にそうになればすぐさま戻ってこい。我が回復させてやろう。そして、一人でも多くの人間を殺せ。殺した人数が最も多い者には褒美をやろう」


「「「はい!」」」


 そう返事をした三人の表情を見ると、心なしかやつれているように見えた。あの後特に指示を出していなかったから、その間で何かあったのだろうか?


 まあ、今現在の体調よりも俺は結果を重視する。結果さえ出すことができれば、別に体調の一つや二つ、、、三つくらいどうでもいい。


 あ、一応武器とか防具は軽く持たせてある。その辺に売ってた奴だな。三人が持ってるやつよりかは強そうなのを買ってきたから問題ないだろう。


 そして、コイツらだけだと流石に不安だから死の軍団も用意している。ヴァールのせいで確認できなかったものだな。


 スケルトンをひたすら湧かし続けておけば、いくら弱くてもどうにかなるはず、っていう戦術だな。


 これに関しては、ぶっつけ本番でどれだけ呼び出せるかやってみる。まあ、二体同時に呼び出せるのは確実だから、最悪二体ずつ地道に召喚していく予定だ。


 これが魔王軍の雑兵たちだな。とにかく相手のプレイヤー勢力をどうにかしてもらう予定だ。


 そして、俺の従魔たちだが、まず海馬たちはお留守番だ。流石に留守にするわけにもいかなかいからな。それでも、一層を突破されたら終わりなんだから気張ってほしい。


 そしてその他の従魔は全員出勤だ。相手の天使がどれくらい出張ってきているかにもよるが、基本天使を相手にしてもらう。


 まあ、ないとは思うが予想外に余裕そうだったらプレイヤーたちを相手にしてもらうかもしれない。


 そして、肝心の俺だが、俺は勿論、相手の総大将、親玉を狙いにいく。


 最初は様子を見つつ、行けそうな時に確実に獲りにいく。それまでは静観だな。


 だって普通に楽しみたいじゃん。こんな大戦生で見れることあんまりないからな。まるで自分がストラテジーゲームでもしているかのようだ。


 そして、急拵えではあるが、隠し玉も用意した。従魔たちと戦って見つかった課題点を克服するための措置だな。


 ログインして転移するまでの短い時間しかなかったから大したものは用意できていないが、活躍してくれることを望む。


 おっと、流石にゆっくりしすぎたか? 胡麻粒だったのが、ビー玉くらいになってるぞ。じゃあ、最後に気合を入れていきますか。


「ではお前ら、逝くぞ」

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