第645話 ヴァール


「ごっかいじょれ強い?」


 一体、何を言ってるんだコイツは。確かに強そうではあるのだが、ごっかいじょれってなんだ?


「はい、獄界、序列、四位です」


 え、獄界ってこと? 地獄界ってこと? その中の序列で四番目に強いってこと?


 それって滅茶苦茶強いじゃん。


「ち、因みに一位は誰なんですか?」


「え、そりゃもちろん閻魔様でございますよ?」


 閻魔様ー! って普通にいるんだ。というか、寧ろそれ以外あり得なくね、当たり前じゃん、みたいな感じのノリで返されたんだけど。


 閻魔様ってどんくらい強いのだろうか。俺なんて軽く捻り潰されてしまうんだろうなー。でも、そうなってくると逆に捻り潰して欲しくなるな。死亡数稼げそうだしね。


 これはいつか閻魔様を呼び出す、もしくは会いに行かないとな。


「あれ、ってことはヴァールさんは閻魔様の配下、部下ってことですか?」


「ん、いえ、別に獄界だからといって必ずしも閻魔様の配下であるわけではありません。私は特に誰の下にもおりません。誰かの軍門に下るというのが苦手でしてね、自由にやるのが好きなのです」


「へぇー、そうなんですね」


 これは、かなり重要な情報かもしれない。


 まず、ヴァールを頼りに閻魔様にアポをとってもらうことは難しそうだということだな。まあ、急ぎじゃないし、いつか会えるだろう。


 そして、もしかしたら俺の配下になってくれるかもしれない、ということだ。


 現にこうして俺の召喚に応じてくれているわけだし可能性はゼロじゃない。獄界で四番目の強さが加わるなら戦力アップも甚だしいからな、是非とも味方になってほしい。


 ん、ちょっと待てよ。獄界で四番目の強さならなんで召喚できたんだ? 自分の実力で断ることもできそうなもんだよな? わざわざ召喚されてあげる理由があるのか?


「あの、何故ヴァールさんは召喚に応じてくれたのですか? それほどの強さをお持ちなら召喚を、拒否することもできたんじゃないですか?」


「あぁ、確かに拒否することもできましたね。ですが、今回は召喚する力がかなり強かったですので、これは期待できるかも、と思いましてね」


「き、期待出来る、というのは?」


「え、それはもちろん直接戦闘してくださるんですよね? 獄界ではもう上の人たちには勝てませんし、下の奴らは余裕すぎますからね。ちょうど他の世界を見てみようと思ってたところなんです。私の生きがいは生が焦げるような戦いをすることだけですから。楽しみにしてますよ? では早速」


 え、今から?


「いやいやいや、ちょっと待って! 今から戦うってこと!?」


「はい、あ、準備が必要ですか? いくらでも待ちますよ?」


 ってか、なんで召喚された側が主導権握ってんだよ。


 もう、いいや。やってやろーじゃねーか。獄界四位の実力、しかと見せてもらおうじゃねーか。

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