第646話 上位互換


「羅獄門」


 ヴァールがそういうと、地面が高熱のあまり溶解し、そのまま生き物になったかのように、口をあけ俺を飲み込もうとしてきた。


 羅獄門、といえばウチのペレが羅焦門を使っていたな。もしかして、それの上位互換ということだろうか? いずれはペレもあれだけのものを使えるようになるのか?


 そんなことを考えながら、俺はなんの抵抗もすることなく、その門に飲まれた。ワンチャン殺してくれないかなー、という淡い期待を込めて。


「あら、これで終わりですか。意外と大したことなかったですね。もう帰りましょうかね」


 そんな声がヴァールの方から聞こえた。しかし、こちらとしては急に喧嘩を売られて先制攻撃も取られて、殺して欲しいという願いも叶えてもらえなかった状況だ。


 だが、どれだけそちらが帰りたくても俺からノーと言わせてもらおう。まだ、始まったばかりだ。


「おいおい、もう帰るのか? 折角ここからってところだろ? それに、いい一発貰ったんだから、お前も食らってけよ。【爆虐魔法】、ナパームボム」


「なっ、まだ生きていたんですか? くっ……!」


 ナパームボム、これは科学の力を使った消えない炎だ。流石にこれは地獄にはないだろう。存分に苦しんで欲しい。


「ほう、これはどうやら消えない炎のようですね。こちらの世界にもあるとは思ってもいませんでしたよ。ただ、これは閻魔様の得意技ですからね、もちろん対抗技もご用意しております。【炎纏】、」


 相手がそう唱えると、まるでさながら火を使って演奏しているかのように炎を操り、そして自分の身に纏ったのだ。……まじか。


「消えないなら、使わせてもらいますよ。あれ? 消えない炎はあっても、私みたいなものはいませんでしたか?」


 あれ、コイツ煽ってきてね? まあいい、気にしたら負けだ。カチンときても向こうの思う壺だからな。


 ってか、そうか、そうだよな。よくよく考えれば向こうは地獄だ。火や炎とは切っても切り離せない関係だよな。


 炎を纏ったヴァールの姿は、雷を纏ったハーゲンのようだった。しかし、その時のハーゲンとは違い、自分の雷ではなく、相手の炎を使っている。しかも、なぜか消えない炎なのだ。


 そしてその動きはまるで陽炎のように実体がなく、揺らめきながら動き、俺の元にきて、首を一刀両断にしてきた。


 カキンっ


「なにっ!?」


 まあ、そうなるよな。だが、俺には効かないのだ。ということで、こちらのターンに行かせてもらおうか。


 目には目を、歯には歯を? だ。


「【人魔一体】、ハーゲン、ペレ」


 初めての二体融合だな。だが、なんとなくいける気はした。そして、実際にできた。どんな見た目なのか非常に気になるけど、まずは目の前のコイツを仕留めましょう。


「【炎雷万招】、【雷纏】」


 これで俺の方が上だな。

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