第640話 台本と試験


「はぁ……」


 疲れた。転移しようとしたら急に運営の使いが現れて、仮面をかぶれと言われて渡されて、声は厳かな感じにしてると言われ、挙げ句の果てに台本まで用意してると言われた。


 いや、まあ確かに台本がなかったら緊張して何も喋れなかったと思うし、仮面がなきゃ正体も余裕でばれてたと思う。思うけど、、、


 もうちょっと余裕を持って準備できなかったんですかね??


 なんで俺が転移しようと思って、転移! っていうまでノータッチだったの? そんな急に言われたところで結局微妙な感じになったでしょ!


 なんとか格好だけでくぐり抜けられたとは思うが、心の準備とか色々あるだろう、本当にやめてくれよー。ここの運営、もしかして俺のことおちょくってんのか?


 うわ、コイツ本当に魔王とか名乗っちゃって、笑。みたいなこと思われてたらもう立ち直れないぞ。


 もういいや、過去のことは忘れるに限るよな、うん、忘れよう。俺は魔王なんだから別に何も心配することはない。


 それに、名前が先行して、後から身もついてくる、みたいなことはよくある話だろ? 俺がそうなってやれば良いだけの話だ。俺は魔王だ、強くて偉大でカッコいい魔王様だ。


 現在、俺は今、玉座に座ってプレイヤー達の反応を待っている段階だ。プレイヤー達にはそれぞれウィンドウが表示されていて、どうするかを決めてもらっている、らしい。


 肘をついて頬杖をついている状態だな。


 この体勢は別に指示されていなかったのだが、緊張と疲れでため息が出てしまって、それ以降この体勢を変えずにいる。これって足とかも組んだ方がいいのだろうか?


 おっと、皆の選択が終わったようだ。意外と残っているな、もう少し減ると思っていたのだが……


 あ、はい。台本ですね、わかりました分かりました、ここを読めば良いんですね、はい了解いたしました。


 それにしてもゲームの世界はカンペが読みやすくて助かりますね。これなら俳優業の方とか皆、こっちでやればCGを使ったり、台本を覚えたりせずに済みますね。


 無駄話はいらない? 次のセリフを言え? はいはい分かりました。


「貴様らが、魔王軍に入るもの達か。だが、タダで入れるとは思うなよ? 今のは志の問題だ。次は、実力の方を試させてもらおう。今から三日以内に第二層まで自力で到達できたものだけ、我ら魔王軍として手厚く迎え入れてやろうぞ。では、検討を祈る」


 そうして俺は再び元いた場所へと転移させた。なるほど、なんでこんな大規模な転移がそう易々とできるのか、と思っていたが、返す前提だったというわけか。


 まあ、それで少し節約したとしても大規模すぎることには変わりないのだがな。


 あ、ちなみに今のセリフは台本通りではない。というかむしろ台本はタダで入れると思うなよ? までだった。


 そのあとは自分で入れる条件を決めてくださいって書いてあったから、俺が自分で決めました、はい。


 まあ、流石にほとんどの人ができるだろうが、あまりにも弱すぎる奴は必要ないということで、これくらいのハードルは超えてもらおうと思う。


 さて、では試験をクリアしたプレイヤー達をどう使うか、考えて行きますか。

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