第639話 宣告と選択
俺はクロムウェル、生粋のタンクだ。俺の大盾はどんな攻撃をも防ぐ最強の盾だ。
って、そんなことはどうでも良くて、今、俺は魔王城の前にいる。
この魔王城、と魔王には常に不穏な噂が流れている。
例えば、城に入った瞬間にやられた、だとか、この城は水で溢れている、だとか、一階層目から魔王がいる、だとか、どれも眉唾もので、信憑性のしの字もないのだが、火の無いところという言葉もあるからな、なんらかのアレはあるのだろう。
そして、今回のイベントは天魔大戦、魔王か天使の味方になって敵を討ち取ろう、という趣旨のイベントだ。
そこで俺はあえて魔王側につくことを選んだ。国別対抗戦で華々しいデビュー、俺らからすると忌々しいデビューを果たしたわけだが、個人的には恨みだとかそういう負の感情は一切持ち合わせていない。
単純に強くなりたい、ただそれだけなのだ。
その為に、魔王でもなんでも利用してやる。ただそれだけの話だ。
それに加えて、今回の戦争、俺は魔王が勝つと睨んでいる。魔王の強さを知っているわけではないが、運営がイベントという場を使って、華々しくデビューさせたんだろ? なら、もう少し引っ張りたいところだろ。
だから、結末が決まっているのならば魔王が勝つのは必然だと思う。だが、そこにプレイヤーという不確定要素が入ってくるからどうなるかはわからない。だが、運営の息が魔王にかかっているのは間違いない。
ということは魔王についていけば、間違いはない、そういうことだ。
そういう結論に至って俺は魔王城の前にいるのだが、今のところ三日三晩なんのあれもない。一度、天使みたいだが、全然違う変な生物がきたが、それっきりだ。
これは魔王側につくことはできないのかもしれない、と諦めようとした、その時、俺の体が白い光に包まれた。
❇︎
「人間どもよ!」
その力強く威厳のある声によって俺の意識は覚醒した。周りには大勢のプレイヤー、そして目の前には一人の魔王。どうやら仮面をかぶっているようだ。
あれ、こんなかっこ良かったっけ?
「我ら魔王軍は、天使との戦を控えておる。貴様ら人間がどの程度の強さなのか、我は全く知らん。だが、我が軍門に降るというものは拒まぬ、ともに天使を討ち取り覇道を歩もうぞ」
え、意外とすんなり協力してくれる感じなのかこれは? これなら思ったよりも楽にいけそうだな。
そんなことを考えたのだが、まだ魔王の言葉は終わっていなかった。ただ、という言葉を発した後にあまりにも恐ろしいオーラをはっしながら、こう付け加えた。
「我らを裏切ろうとする輩には一切容赦はしない。天使と同じ、いやそれ以上の苦痛を絶望を、後悔を与えてやろうではないか。その覚悟があるものだけは我の下へくるが良い。また、覚悟が足りぬものは、今回だけは見逃してやろう、だが次はない」
そういって魔王は体を翻し、マントを靡かせながら後ろにあった玉座へと向かい、座った。
俺は目の前に現れた、魔王軍に参加しますか? というウィンドウに対して、迷わずにはい、のボタンを選択した。
間違いない、この方についていけば俺は間違いなく強くなれる。俺はそう確信していた。
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