第641話 思惑と勘違い
「それで貴様らが魔王軍に入る者というわけか……」
台本通りのセリフをきっちり言って、俺はその該当者であるプレイヤー達をみた。
えーっと、右から、魚人、魚人、死にかけの青年、以上。
三人? 魔王軍に味方するプレイヤーは、たったの三人ですか!?
え、だってさっきはもっと人数いたよね? 魔王軍に入りますかで「はい」を押した人結構いたよね?
それで三人? 一体どういうことだ? 試験の内容も簡単にするために、サメたちと海馬には攻撃しないよう言っておいたのに、三人?
もしかして、それでも難しすぎたってことか? いや、でも水中を泳いで次の階への魔法陣を見つけるだけでクリアだぞ?
仮に金槌がいたとしても全員が全員、金槌だとは考えづらいだろ。
あ、もしかして、魔王城の偵察に来てた、とかか? それならみるだけ見て、あとは撤退というのも頷ける。
もしくは、魔王城を普通の観光目的できたとか? 現実でも現存する城を見に観光客がたくさんくるからな。そんな感じの魔王城ツアー、みたいなノリで来てたってことだろうか?
そして、第一階層をアトラクションとして楽しんだ後は満足して帰ったということだろうか?
もし、本当にそうならなかなかいい根性してるじゃねーか。次会った時は容赦しないからな。ま、次会ってもその人がここにきてたかどうかなんて知る由もないんだけどな。
「ゴホン! 思ったよりも人間は貧弱なようだな。もう少しは残ると思っていたのだが、まあ良い。貴様らには一騎当千の活躍を期待している。有象無象の敵を薙ぎ払い、天使達に身の程を教えるのだ!」
おい、なんか返事しろ、そしてそのポカーンみたいな表情もやめろ。俺が一人だけ熱くなってて恥ずかしいだろ。
まあ、俺のことNPCだと思っているだろうから仕方がないのかもしれないが、それでも頷いたり、やる気のこもった目をしてくれねーかな? 俺、一応魔王なんだが?
俺がそんな面持ちになっていると、死にかけの青年が瀕死の域を脱したのか、手を上げた。
「ま、魔王様、質問をよろしいでしょうか……」
お、質問? これは嬉しいな。少なくともこの青年はやる気があるってことだからな。質問の内容次第では色々と考えてあげてもいいな。彼女いますか、とかだったらぶっ飛ばすけど。
「いいだろ、言ってみろ」
「はい、ありがとうございます。私たち矮小なる人間を魔王軍の末席に加えていただいたこと、とても光栄に存じます。しかし、私らはあくまで人間、今のままでは天使なんかに到底太刀打ちできる気が致しません。魔王様の期待に答える為にも、失礼を承知で、どうか私たちを強くしていただけませんか?」
お、おう。めっちゃ謙ってきたなコイツ。ちゃんと上下関係という縦社会に揉まれてきたのだろうか。
だが、俺への敬意はしっかり伝わったし、やる気も十分感じられる。これなら是非とも今すぐ強くしてあげたいところだ。だが一つ確認しないといけないことがある。
「それがどれだけのことかを、知っての発言であるか?」
「っ……! はい。もちろんでございます。この身、いや私の全てを捧げて魔王様に忠誠を尽くすつもりでございます」
ん、なんか違う気もするが、これなら多分大丈夫だな。
ただ、強くするとは言っても一筋縄ではいかないのだ。だからこそ本人のとは身持ちが大切なんだよな。
「その気持ちしかと受け取った。では、我が責任を持ってしっかり貴様らを強くしてやろう」
「あ、ありがとうございますっ!!」
「うむ、では、もう一度今から第一階層に戻り、再び第二層へと到達してくるのだ」
ただし今度はサメと海馬を起動して、だけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます