第632話 愛しのペット
「あ、アイスーー!」
アイスの階層に行くと、とてつもなく寒かったが、いつもと変わらぬアイスの姿がそこにはあった。
『うぅー、アイスー、良かったー。アイスはこのままで良いんだからねー。可愛いアイスが俺は好きなんだからねー。ウリウリーよしよしー』
『ねーねー、ごちゅじんちゃまー。あいすねー、ごちゅじんちゃまのためにつよくなったんだよー! みてみてー』
アイス!? 俺の今の話聞いてた? ほっぺスリスリしながら言ってたんだけど、何も聞いてなかったの? それともアイスには難しすぎたかな?
強くなったって、もう十分強いだろアイスー。この状態からどうやって強くなるんだよー。まぁ、見た目が変わってないから、もう大丈夫なんだけどな。
『いくよー! ぜったいれいどー!』
「……」
いやいやいやいや、これ絶対にアカン奴やろ。どーみても氷魔法とかの最終技みたいなら感じやろ。
アイスの絶対零度は、どうやら周囲の水分を利用して凍らせる、そういった技のようだ。
今はそこらへんに生えてた氷柱目掛けて撃っていたから分かりにくかったが、この技が仮にその相手の身体の中の水分まで凍らせるとしたら……これ、ヤッバいな。
ってか普通に一撃必殺技じゃないんですかね、アイスさん、アイスさぁん!!
貴方もう既に十分強いですよね? なんでこんなことになっちゃうんですか?
はぁ、こうなってくると、ほんと見た目は変わらなくて良かったです、はい。これで見た目が大型犬になってたら立ち直れなかったです。
『ねーねー、ごちゅじんちゃまー、あいすすごいー?』
うぅ、今はそのつぶらな瞳、純粋な心が眩しい、眩し過ぎる!
『うん! アイスが強くなってくれて俺はとーっても嬉しいぞー! よしよしー』
『やったー! じゃあもっとつよくなるためにあいすがんばるー!』
違う、そうじゃないんだ、アイス。でもこれを言ってしまってアイスが悲しむ姿が見たくない。
それに、俺が嫌われる可能性がミリ単位でもあるならそれも避けておきたい。
あれ、もしかして甘やかしてきた俺が悪いってこと? 強くなり続けるこの可愛いお犬ちゃんは、私のせいですか?
よし、気を取り直して次に行こう。次はペレだ。
❇︎
「うぅ、流石にあちーな」
ペレの階層はやはり暑い。いや、熱い。変温無効持ってる俺でもこれなんだから生身の人間は相当しんどいだろうなー。
そんなことを考えていると遠くの方から騒がしい音が聞こえてきた。どうにも誰かが戦ってるっぽい。
え、もしかして侵入者!?
俺がその場所まで急行すると、なんとそこには……
「あ、アシュラ!?」
アシュラとペレが全力で戦っていた。
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