第631話 魔王の本気


「【筋骨隆々】【魔闘支配】」


 ッダン!


 俺は地を蹴ってミエナイの背後に回る。それこそ、この俺のスピードに目も追いつかなかったことだろう。


 筋骨隆々で筋肉を増強し、魔闘支配で筋肉に刺激を与え、更に出力を上昇させる。


 これをするだけでも普通の移動速度が桁違いに速くなる。そして、桁違いの速度はそれだで相手に致命の一撃を与えられる。


『先ずは一人、【高速拘束】」


 俺はミエナイの頭に手をポンっとタッチし、瞬時に拘束した。流石に模擬戦で命を奪うのは、いかに魔王といえどやりすぎだからな。


 そしてその流れのままイエナイの背後に回った。そして、


『二人目、【水操作】』


 イエナイはそのまま倒れてしまった。身体中の水分をグッチャグチャにされ、気分が相当悪くなっただろう。それこそ、助けてくれ、の一言も言えないほどにな。


 そして、次が最後だ。せっかくだから皆違う方法で処理したいな。そうだ、あれをしよう。


『これで最後だ。【猫騙し】』


 パチンッ!


 その乾いた音を最後に、堕天使たちとの模擬戦は終了した。


 あれ、良いものを見せてやろうとか言った割に、高速拘束と水操作、猫騙しと俺のスキル群のなかでもかなりマイナーな奴らを使ってしまったな。


 しかも、スキルそのものも地味な奴らだ。これは魔王の威厳としてどうなんだ?


 いや、これには言い訳がある。俺のスキルの一軍、それこそカッコいいものは基本的に強すぎるのだ。


 爆虐魔法、不動之刀、怒髪衝天とかどう考えても模擬戦には向いてないだろ?


 そう、だから仕方がないのだ。ちょうど良い具合の、安牌な攻撃手段を早いとこ見つけないといけないなー。


 このままじゃ変な印象が魔王についてしまう。


 あ、そうだ、アドバイスをしてあげないとな。折角、いい感じなんだっから褒めてあげたいし。


『ゴホン、お前たちはこの短い期間でかなり連携が深まり、強くなったと思う。これからもそれぞれの得意な所を伸ばし、そしてお互いに補いあえるような立ち回りを常に意識して、三人の総合力で相手を上回れるように頑張ってほしい』


 あ、拘束解いたり、体調回復させたりするのを忘れてた。猫騙しをした奴なんて、マジで耳が使い物になってなさそうな顔してるもん。


 ❇︎


 その後、また同じようなアドバイスをして、堕天使たちの元を後にした。これで更に連携に磨きをかけてくれることだろう。


 よし、次はアイスだな。


 んー、アイスはもう十分過ぎるくらい強いから、そのままでいいかなー。変に進化とかして、ドーベルマンみたいになってたらショックだ。


 アイスは魔王軍のペット、癒し枠だからな。可愛いかったらそれでいいのだ。

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