第630話 三体対一
『じゃあ、俺と模擬戦しようか。どれだけ強くなったのか、俺に見せてくれ』
そう言って武器を展開した俺を前に、堕天使たちの表情が強張った。
『分かりました』
『ご主人様の胸を借りて』
『全力で行かせてもらいますっ!』
いや、なんだよその喋り方! そこは別に三人で連携しなくてもいいだろ!
「……っ!」
っと危ない、先ずは様子見でキコエナイの触手による牽制か。確かにリーチもあり、かすりでもしたら即捕獲だからな。
だが甘い。
武装演舞をしている俺には通用しないぞ? 立ったままの状態から触手を迷わずに切断する。
展開している武器は俺が以前使っていたオークと海龍の剣……あ、そういえばこの二つアシュラにあげちゃったんだ。だから悪魔の脇差しかないじゃん! でも、手が空くから拳も使える。実質数は変わらない、うん。
い、今は俺の所有武器が少ないからこれしかないけど、これからはもっとたくさん爺さんに作ってもらう予定だから、一切心配ない、はず。
ただ、少し操作が難しいな。触手と似た感じかと思いきや、攻撃するためのワンアクション、剣でいうなれば斬る、という動作が必要なのだ。
それが触手を使っていた分、少し違和感に感じたが、それもすぐ慣れるだろう。堕天使たちには、試運転相手にはなってもらいたい。
三人は触手が通用しないと判断するや否や、すぐさまイエナイが毒墨を発射した。
「っ、【天駆】!」
かなり、広範囲に発射したようで少し危なかったが空中に回避できた。そして、ここいらで一人くらいは落としておこう。そう思い、俺は触手を展開し、武装演舞で倒そうとした。しかし、
「ん、一人いない?」
キンッ!
危なかった。今のは完全にやられた。
なんと、ミエナイが名前の通り姿を消して俺の背後へと回っていたのだ。しかも流石は元天使、羽根を使って飛ぶことも容易ときた。
なるほど、あの毒は俺への攻撃ではなく、あくまで目眩しで本命は姿を消したミエナイだった、ということか。
だが、俺の武装演舞のおかげで、体が反応できなくても意識だけで防御することができた。しかし、ここまでの作戦を立ててくるとは、ちょっと評価を改めた方がいいかもしr
「えっ?」
ビターンッ!
俺は地面に叩きつけられた。そう、キコエナイの触手で、だ。俺が防御に武器を使ってしまったのと、これが本命だったと油断したこと、それらが作用して、俺は完全に捕らえられたのだった。
触手は完全に足に張り付き、今では巻きついてすらいる。これはもう引き剥がせないだろう。
ザシュ
そんな足はもう要らない。また、生やせばいいだけだからな。
「【再生】」
ふぅ、ここまでとはな。おもったよりも強くなってくれていたようだ。
じゃあ、試運転も終わったことだし、ここからはしっかりと相手してあげますか。
『魔王を地につけさせたお前たちに、良いものを見せてやろう』
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