第614話 己の為に


 よし、ここからは一旦俺の用事を進めていこう。


 俺の用事とはシンプルに俺自身の強化だ。


 え、前したじゃないかって? 落ち着くんだ。理由と方向性について今からしっかり説明する。今回はやることも全て決まった上でしっかり目的もあるんだからな。


 さて、俺の強化計画なのだが、今回はステータスをあげていこうと思う。


 アシュラやカトルと模擬戦をしたことで、分かったことがあるのだ。それは、俺があまりにもスキルに頼りすぎている、ということだ。


 もちろんスキルに頼ることが悪いことだとは思わない。手っ取り早く強くなれるし、どれも便利だからな。


 だが、それだけではダメなのだ。確かにスキルは便利だが、どの状況にも対応できるかといえばそうではない。また、スキルを封じてくる敵とも今後戦うかもしれない。


 そういう事態に出会した時にスキルだけを鍛えていることはとても大きなリスクになりうる。


 だからこそ、今回はステータスを重点的に上げていこう、ということだ。


 ま、最近あまり死んでなかったし、原点回帰、初心に戻るという意味も込めてしっかり死んでいこう。前は定期的に死んでいこうとも思っていたのだが、最近はすっかり忘れてしまっていた。


 前、死んだのはいつだっけな? だいぶ前な気がするんだが。


 よし、今回の死に戻りではまず、ステータスを大幅にアップさせるために、とりあえず首吊りで大量自殺しようと思う。


 首吊りは、今のところ対応する無効化スキルをゲットしていないから、しにまくるのに向いてるってことだ。前も結構やったのに、まだ出てないってことは、これからずっと出ないという可能性もあるからな。


 ❇︎


 よし、始めるとするか。


 俺は魔王城の寝室に移動してきた。この部屋は最近見つけたんだが、どうやら、魔王城の最上階の更に上に位置しているようなのだ。


 そして、見つけた時になんの気無しに横になってみたんだが、その時にここが俺のセーブポイントになってしまったらしい。つまり、死に戻り地点だな。


 魔王様が他のプレイヤーと同じ広場で復活したら街は大パニックだから、運営が気を利かせてくれたのだろう。うん、特別感がなんともたまらんな。


 そして、何故ここにきたのかというと、そう、ここが一番効率がいいからだ。死に戻る地点で死ねば、その場で生き返ることができる。そうすることで、移動を挟まずにノータイムで死に続けることができるのだ。


 よし、天井のシャンデリアにアスカトル特製のロープをくくりつけて……


「【天駆】、【貫通】」


 うぐっ、あれ、意外とこの体勢キツいな。全体重プラス装備を首で支えてんのか、そりゃ首もげるわ。


 …………あれ? 何で死んでないんだ? おかしいな、首の吊り方はこれであってるはずなんだけどな。


「あっ、え?」


 気づくと俺は、ベッドに横たわっていた。

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