第615話 変化と死


 何かが前回と違う。ざっくりとそんな印象、違和感を受けた。


 前はロープを首にあてて、足が離れるとすぐに死んでいた気がするんだが、今回は何故か頭が取れるような感覚に襲われるのだ。


 俺の頭が床に落ちて、そのままそこからの眺めも一瞬見えるのだ。だが、それも長くは続かず、気づくとベッドに横たわっている。


 何回やっても結果は変わらないのだ。え、前回は決してこんな感じじゃなかったはずなんだが、それも結構、昔だから正直覚えてないのだ。


 もともとこんなかんじだったのかもしれないな。ま、取り敢えず続けていればいつか分かることだろう。


 そうして俺は死に続けた。


 ❇︎


ーーースキル【欠損無効】を獲得しました。

   スキル【再生】を獲得しました。


【欠損無効】‥体が欠損しなくなる。スキル【再生】を取得。


【再生】‥体の欠損、部位破壊が生じた時に、MPを消費し元通りにする。


「【欠損耐性】は【欠損無効】に統合されます」


 お、お、おう。そういうことだったのか。俺って首吊りして首もげて、床からの景色が見えて、その結果欠損無効と再生を獲得したんだな。


 ふむふむ、って、なんでロープなのに首がもげてんだよ! このロープってそこらへんの店で買ったもの、、、じゃ、ない。


 そうだ、お店に行くのが面倒くさいからといって、アスカトルに作ってもらったんだ。


 それでアスカトルが戦闘用か何かと勘違いして、こうなったって訳か。


 いや、それにしても威力強すぎじゃねーか? 確かにちゃんと死ねるように物理攻撃無効に貫通を発動してはいたんだが、それにしても強すぎるだろ。


 アスカトル、これはますます忍者というか、暗殺部隊というか、極めて来ている気がする。俺も負けてられねーな。もっともっと死にまくらないと。


 よし、もう少し続けるか。


 ❇︎


 気づくともうだいぶ時間が経っていた。あと、毎回毎回首がもげるの待ってたら時間かかるから、窒息無効と、血液不要を貫通してみた。


 すると、本来の首吊りに戻り、更に効率がアップした。そのまま今の今まで続けていたのだから、そりゃステータスも上がってくれていることだろう。


 それにしても、やっぱり死ぬのって怖いな。首に縄をかける瞬間とか、もう何百回とやってきたが、それは復活することが分かっているからだ。


 だから、もし、首吊りをして目の前がブラックアウトし、意識がなくなり、俺の人生が終了すると考えると、やはり怖い。


 死後の世界が想像できないのも、自分がいなくなった後の世界を想像するのも怖いのだ。


 世界のほぼ全ての人は、まるで何も変わらないように生きていくのだろうし、今この瞬間の自分もそうだ。


 自分が最初から存在する必要なんてなかったのでは、そんなことすら感じてしまう。


 まあ、だからこそ、生きてて良かったと思えるように皆、生きるのだろうな。


 よし、今日はこれで終わろう。久しぶりに死にまくったからちょっと変なこと考えてしまったな。


 明日はステータスを確認してその後、自分の強化か配下の強化、はたまた別のことをするか考えよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る